2012年7月19日

現状維持バイアスをはずすための「場所」とは?【スリリングジョーク】

● 今回のテクニック:【スリリングジョーク(6)】

スリリングジョークとは、相手に対して、「もし●●しなければ、■■になる
ぞ」という脅しをしたあとに、すぐに「それは冗談だ」と撤回するコミュニケ
ーション技術。

相手の心象を悪くする可能性が高く、極めてリスキー。相手と強烈なラポール
が構築できていない限り、活用するのはやめたほうがよい。3年に1度ぐらい
使ってもいい、インパクトのあるリーディング技術である。

もちろん、乱用すればご自身の信用は著しく低下する。


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マネージャー :
「人の話に対して否定を繰り返していると、論理的な思考ができなくなると
いう話をしたよね?」


部下 :
「はい。何でもかんでも否定するっていうことは、論理的に考えていない、
とにかく否定したいから否定する、という感じになりますものね」


マネージャー :
「そうだよね。そして、自己否定を繰り返すのもよくない」


部下 :
「まったくです。過剰に卑下するのはどうかな、と思います」


マネージャー :
「ところで今期の頭に提出してもらったアクションプラン、進捗状況がよく
ないんだけど、これはどうかな?」


部下 :
「はい……。お恥ずかしい話ですが、社内の新しいプロジェクトに参画して
から、そちらのほうで時間がとられておりまして……」


マネージャー :
「新しいプロジェクトの話は置いておいて、このアクションプランの(A)
の部分は着手さえもしていないよね?」


部下 :
「はい、そうなんです。工場の設備担当の方と打合せしないと、何も始まら
ないものですから」


マネージャー :
「それじゃ、設備担当との打合せもしていないってことかな?」


部下 :
「え、ええ。そうなんです。設備担当が意外と忙しいようで」


マネージャー :
「4月からこの7月まで、その設備担当に何度、『打合せしましょうか』と
投げかけたのかな?」


部下 :
「え?」


マネージャー :
「え? じゃなくてさ。何回、打合せの機会を持とうと投げかけたのか、と
聞いているんだよ」


部下 :
「それは……。1回とか、2回とか……」


マネージャー :
「この3ヵ月半の間に?」


部下 :
「………………は、はい……」


マネージャー :
「ちなみにさ、さっき言っていたプロジェクトの話だけど、あの進捗も良く
ないよね?」


部下 :
「そうなんです。プロジェクトリーダーのHさんの出張が多くて、なかなか
会議が開かれず……」


マネージャー :
「ふーん」


部下 :
「……」


マネージャー :
「一度、会社辞めたら?」


部下 :
「…………………………え」


マネージャー :
「どうも、君はこの3ヵ月半、これまでやってきたようにやってきただけで
あって、何も変化をしていない。まだ29歳だったよね? いい機会だから、
転職したほうがいい」


部下 :
「…………ちょ、ちょっと」


マネージャー :
「なんだ? ちょっ、ちょっと……って」


部下 :
「いやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいや。待ってく
ださい、待ってください。いきなり会社辞めろって言われても……」


マネージャー :
「辞めろとは言ってないよ。辞めたら? と聞いただけだ」


部下 :
「お、同じじゃないですか……」


マネージャー :
「でも、自分で決めて、自分で提出したアクションプランだよ。どこからど
う見ても、できない理由のないものばかりだ。それをやってないだなんてあ
り得ないだろう」


部下 :
「そ、そりゃそうかもしれませんが……」


マネージャー :
「君が先ほど言った、設備担当の人たち、自分で決めたこと、会社で決めら
れた方針、きちんと守って日々仕事をしているよ。君はどうなってるんだ」


部下 :
「…………う」


マネージャー :
「現状を変えたくないという、現状維持バイアスをはずせないのなら、他の
会社に転職したらいいよ。そうしたら一発ではずせる。この会社で慣れ親し
んだ慣習は、他社では絶対に通じない」


部下 :
「……」


マネージャー :
「君がどれぐらいの『市場価値』があるのか、一度試したらいい」


部下 :
「いや……あの…………申し訳ありません。本当に、そ、そういうことを言
わず、お願いします。ご存知の通り、去年双子が生まれまして、その……。
いま転職しろと言われても、その……」


マネージャー :
「冗談だ」


部下 :
「え」


マネージャー :
「冗談に決まってるだろ」


部下 :
「お………………………………………………驚かせないで、ください。
はーーーーーーーーーーーーーーーーーっ。びっくりした」


マネージャー :
「しかし、そうだろう? 否定ばかりじゃないか。自分で決めたことも否定。
上司から言われることも否定。何もかも否定していると、論理的に考えられ
なくなる」


部下 :
「……いやァ、もうお恥ずかしいです」


マネージャー :
「決めたことをやらない限り、自分を否定し続けているのと同じ」


部下 :
「まったく、そうですね……。なんだか最近、頭が整理できなくなってきて
いるんです。論理的思考ができなくなってるんでしょうね」


マネージャー :
「本当に頼むよ、期待してるんだから」



……極論ですが、「現状維持バイアス」をはずすには転職が一番いいです。

もちろん「ぬるま湯」に浸かっているような会社に転職したら最悪ですが、
「決められたことはキチンとやる」という組織風土の会社に転職すれば、

「現状維持バイアスをはずしたい!」と本気で考えている人なら、間違いなく
うまくいくでしょう。

ただ、

転職なんて多くの人にとって現実的ではないですし、転職先がどういう会社な
のかを推し量ることは困難です。

そこで、私がお勧めするのは、他社の意識の高い方との交流。しかも【遠い場
所】へ行って、です。

つまり、これまでと違う環境、これまでと違う仲間と、インパクトの強い体験
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【編集後記】

最近、ちょっと落ち込むことがありました。

その経緯を説明しますと……

サッカーを5年以上も習っている息子(8歳)が全然上達しないどころか、リ
フティング自体、まったくできないということに呆れ、

そのまま放置していたら、

コーチから「今後100回以上、リフティングできない子は試合に出させな
い」という方針が出されたのです。

チームの中でリフティングを100回できない子はほとんどいません。

ところが私の息子は10回とか20回ぐらいしかできず、とてもコーチが言う
基準をクリアできそうにないのです。

実際に、先週の日曜日、朝からサッカーの練習を見に行ったのですが、他の子
たちが合同練習、試合を繰り返しているのに、

私の息子ら数人だけは、昼を過ぎてもただひたすら「リフティング」の練習。

4時間ぐらい経過してから、さすがに私も可哀想になってきたのですが、しか
しこれは完全に親の責任です。

「親の責任だ」ということに、先週の日曜日はじめて気付き、私は落ち込んだ
のです。

そして息子に、本当に申し訳ないという気持ちになったのです。

他の子がリフティングをできるのは、親が練習をさせたからです。自分で自ら
進んで練習した子はひとりもおらず、

厳しいお父さんの指導の下、泣きながらでも、ただひたすら毎日リフティング
をしていたら、100回でも1000回でもできるようになった、ということ
なのです。

テクニックではなく、とにかく毎日リフティングしたか、ということです。そ
れだけなのです。

多くの親御さんが私の息子を見つめていました。

そして、せっかくの日曜日、ただグラウンドでリフティングだけさせられ続け
る息子の向こう側には、きっと私がいることでしょう。

「なぜあの子はリフティングが出来ないんだろう?」

という疑問ではなく、

「なぜあの子の親は、家でリフティングの練習をさせないんだろう? 可哀想
に」

という疑問をずっと持ちながら。

強いチームのレギュラーになって欲しいだなんて思いません。

それにリフティングができればいいということでもないでしょう。

(このことに言及すると、必ず『リフティングができてもサッカーが上手にな
るとは限らないよ』と言ってくる方がいるのですが、論点はそこではありませ
ん)

5年間もサッカーをやってきて、リフティングが10回ぐらいしかできない息
子を、本人の責任だなんて思う私に問題があったのです。

そしてそこまでの「プロセス」は完全に間違っていました。

毎日30分でも練習をして、それでもできないのなら仕方がありませんが、そ
の「プロセス」をしていない状態では何も言えません。

この夏休みの間で、息子がじゅうぶんにリフティングができるよう、一緒に付
き合いたいと思います。

今からでも時間を取り返せると信じています。

最近、このように考えるようになって、そしてつくづく思うことは……

部下が「あたりまえのことを、あたりまえにできない」のは、100%マネジ
ャーの責任だ、ということです。

多くの現場を見ていて、心の底からそう思います。断言します。

結果が出るかどうかは別にして、いかに訓練するか、練習するか、トレーニン
グするか……。

しかないのですから。それを指導するのは上司です。

過剰に部下の「自主性」を重んじる上司がいますが、それは「逃げ」です。部
下としっかり向き合う必要があります。