2012年10月9日

自分の限界は、自分では決められない理由【エレン・ランガーの循環論法】

● 今回のテクニック:【エレン・ランガーの循環論法(4)】

「それらしき理由」がある場合、人は説得されやすくなる。これを証明したの
がエレン・ランガーであり、エレン・ランガーの循環論法とも言う。

循環論法とは、結論の真理が前提の真理に依存し、その前提の真理はそのまた
前提の真理に依存する……。というように、AだからBであり、BなのはCだ
からであり、CなのはAだからである……というように、論拠がぐるぐる循環
していること。

思い込みが思い込みを呼び、頭をどんなにひねっても、その思い込みの根拠が
別の思い込みによって証明される場合、解決しようがない。

ここで紹介するランガーの循環論法は、少し乱暴な説得技術のように聞こえる
が、人間は説得される「理由/証明」を探しているのかもしれない。

「コピーをとらせてもらえませんか?」

と聞くと60%の承諾率だが、

「コピーをとらないといけないので、コピーをとらせてもらえませんか?」

と質問すると承諾率は93%に跳ね上がる。「理由」になっていなくても、
「それらしき理由」があれば、人は説得されやすくなる。


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● 今回のコミュニケーション例


マネージャー :
「やる気が沸かないから、仕事が完遂できない、という言い分は通らないよ
ね?」


部下 :
「本当にそうですね」


マネージャー :
「この前、『やってもらって当然という態度で仕事を頼んでくる上司はウザ
イ』と言っている若者がテレビに出てたけど、ひどい話だな」


部下 :
「うーーん。部下なんですから、上司から依頼されたことをやるのは当然で
すよね」


マネージャー :
「そうだよなァ。ああいうテレビ番組があること自体、おかしな話だ」


部下 :
「だから、草食系のマネジャーが増えるんでしょう」


マネージャー :
「草食系だったら、もっと肉食べろよって話だよな?」


部下 :
「いや、そういう話でもないと思いますけど」


マネージャー :
「あのさ、ところでこの前、次世代リーダーを育成するためのプロジェクト
を立ち上げることになったんだけど、君にプロジェクトリーダーをしてもら
いたいと思ってる」


部下 :
「ええっ! 私が、ですか……?」


マネージャー :
「そう」


部下 :
「ちょ、ちょっと待ってください。9月から主任となって、はじめて部下を
2人持つようになりました。エリアも広くなっていますし、お客様への挨拶
回りも終わっていません」


マネージャー :
「だから?」


部下 :
「え、だから……って」


マネージャー :
「ちゃんと、自分の主張を言えよ。部下が2人になって、エリアが広くなっ
た。だから何を主張したいの? 俺に察してください、と言いたいわけ?」


部下 :
「あ、いえ」


マネージャー :
「ただ話を聞いてもらいたいだけなら、俺は聞いた。それでいい?」


部下 :
「いえいえ。とにかく私はもう、いっぱいいっぱいなんです」


マネージャー :
「わかった。いっぱいいっぱいなんだな。それでいい?」


部下 :
「いえいえいえいえ……!」


マネージャー :
「だから何なんだって聞いてるんだよ。自分の主張したいことを、ちゃんと
言えって」


部下 :
「ですから、そのプロジェクトのリーダーは無理です。もうこれ以上は限界
です」


マネージャー :
「限界? 物理的な時間が限界ということか?」


部下 :
「あ、それもあります」


マネージャー :
「それも、ってどういうことだ」


部下 :
「まだ主任になって1ヶ月ぐらいしか経っていません。まだ不慣れなことが
多いものですから……。申し訳ありません」


マネージャー :
「不慣れなことが多いから、何なの? 物理的な時間はあるけど、不慣れな
ことが多いから、何?」


部下 :
「えっと……。ですから、いっぱいいっぱいなんです」


マネージャー :
「だーかーらー! いっぱいいっぱいだから何だって? その話を俺が聞け
ばいいわけ?」


部下 :
「いえ、ですから、プロジェクトリーダーの件は無理だと言うことです」


マネージャー :
「あのね。いっぱいいっぱいなのは、君の心理的な限界値だ。それがオー
バーフローしてるだけ」


部下 :
「……はァ」


マネージャー :
「だから俺とのコミュニケーションも、うまく噛み合わない」


部下 :
「はい」


マネージャー :
「たとえば、今の仕事をこなしつつ、大阪の工場の生産管理部を手伝ってく
れと言われたらどうする? ちょうど今、夜間オペレーションを統率できる
人財がいなくて困ってる」


部下 :
「いやいや、それは無理ですよ」


マネージャー :
「どうして? 昔、大阪の工場で3年、生産管理部として働いてただろ
う?」


部下 :
「だって、関東北部のエリアで営業をしながらやるんですよね? それはど
う考えても無理ですよ」


マネージャー :
「だろ?」


部下 :
「え?」


マネージャー :
「お前、迷わず自分の『主張』を口にしたよな? 無理です、って」


部下 :
「……」


マネージャー :
「ほぼ絶対に不可能だと思えることは、『無理です』と、自分の主張を口に
出すことができる」


部下 :
「……」


マネージャー :
「だから、次世代リーダーを育成するプロジェクトのリーダーになることは
不可能じゃない。自分で勝手に限界を作ってるだけだ」


部下 :
「う……」


マネージャー :
「お前に、リーダーをやってもらいたいから、やってほしいんだ。頼む」


部下 :
「わ、わかりました……」


マネージャー :
「俺は、草食系マネジャーじゃないからな」


部下 :
「はい。存じてます」


マネージャー :
「お前、部下が2人できても、仕事を丸抱えして、なかなか渡さないそうじ
ゃないか。組織としてそれじゃあ困るんだ」


部下 :
「う……」


マネージャー :
「次世代リーダーが、そうやって勝手に限界を決めてもらっては困る。部下
に仕事がまわっていかないから、部下も成長しない」


部下 :
「気をつけます」



……脳の短期記憶が、「やりかけの仕事」「やるべき仕事」で溢れかえってい
るので、

「いっぱいいっぱいだ」と、言ってしまうのです。

「倍速管理」で期限を2つ折りにして、仕事をすべて絶対達成させましょう。
そのほうが頭は常にスッキリしているので、ストレスもたまりにくくなるので
す。

先送りの習慣を、科学的に治療します。

11月初旬に、私のセミナーで最も人気の高い「絶対達成マインド」セミナー
を実施いたします。

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【編集後記】

最近よく、日立製作所を辞めた35歳のころのことを思い出します。

そのときの状況を、色で表現すると「白」です。

学校を卒業し、情報サービス事業者大手のCSK(現SCSK)に入社し、最
初に受け持った仕事が、名古屋港にある海運業のシステム開発でした。

その後、日本を代表する自動車部品メーカー「デンソー」へ4年以上、常駐し
ます。

さらに24歳のときに青年海外協力隊としてグアテマラへ赴任。

グアテマラ政府の人事院で国勢調査、国家公務員を対象としたデータベースの
設計開発事業に携わりました。

余暇は剣道を教え、中央アメリカの国としてはじめて「グアテマラ剣道連盟(Federacion Nacional de Kendo en
Guatemala)」の創設に関わりました。

帰国後、かねてから活動していた知的障がい者のボランティア活動に復帰。

名古屋市から委託された、知的障がい者青年学級事業のボランティア連盟の会
長に。

帰国後、半年してから日立製作所へ再就職。

35歳まで約8年間、日立に勤めたのですが、

それまでのすべての経歴が「まっしろ」になるような空虚感を持ちながら、私
は辞めました。

第一子が生まれたばかりの冬でした。

産後、実家にいた妻がアパートへ戻ってきたとき、まさに私の心は白く、誰も
踏みしめたこともないような雪の色をしていました。

日立製作所に辞表を出した翌日だったと思います。

「これからどうしていこう?」

そういう自問もできないほど、私の心はリセットされていて、アパートに差し
込む冬の光と、その光に照らされて眠り続ける長男の顔を見ながら、終始ぼー
っとしていました。

明日、東京ビッグサイトの「IT PROエキスポ」で私は講演をします。

日経ビジネスオンラインの影響で、尋常でない集客を記録したそうです。

今、私は43歳です。

「心理的限界」など、どこにあるのだろう? 「物理的限界」もはるか凌駕し
ているように思える日々を送っています。

余裕で、他人の数倍の仕事をこなし、数十倍の実績を上げられる自信がありま
す。

35歳のときの自分に、いま私がかけられる言葉があるとしたら、

「大丈夫だ」

この一言です。

「お前は大丈夫だから、そんなに真っ白にならないでくれ」

と声をかけてやりたいです。

きっと、それを言ったとしても、「35歳のときの私」は、何も感じないでし
ょうけれど。