2013年1月18日

大げさなリアクションをしてペーシングする【ラベリング効果】

● 今回のテクニック:【ラベリング効果(6)】

ラベリング効果とは、人、物、事象……などを簡易的な言語で表現することで、
その物事に「レッテル」を貼ることである。

ワンフレーズでレッテルを貼り、その表現を繰り返すことにより、その物事へ
の印象に対するバイアスがかかってくることをラベリング効果という。

インプリンティング(刷り込み)効果とも似ている。

たとえ事実と多少異なったとしても、ラベリングをすることにより、相手はそ
の通りの人間へと近づいていく。

コミュニケーションを円滑にするために使用する場合、必ず肯定的なラベリン
グをすること。相手に対する否定的なラベリングは決してすべきではない。


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● 今回のコミュニケーション例


マネージャー :
「君はすごく『聞き上手』だよね?」


部下 :
「え? 課長、どうしたんですか、突然」


マネージャー :
「みんな、君の事をすごく『聞き上手』だと言っていた」


部下 :
「そうでしょうか。まったくそんなこと意識したことがありませんが」


マネージャー :
「『聞き上手』だと、コミュニケーション能力も高くなるだろう」


部下 :
「相手の話を興味深く聞こうとはします」


マネージャー :
「いい習慣だ」


部下 :
「祖父がよく戦争時代の話をするんですが、そういう話も私はとても関心を
持って聞けます。兄や弟は嫌がりますけど」


マネージャー :
「それじゃあ、私の話も聞いてくれるか?」


部下 :
「え? ああ、はい」


マネージャー :
「Y商事って知ってるか?」


部下 :
「ええ。最近、大型の案件が出てきたという」


マネージャー :
「そう。それで昨年、Y商事に訪問している最中に、私にとって衝撃的なこ
とがあった」


部下 :
「衝撃的なこと、ですか?」


マネージャー :
「Y商事の男子トイレを清掃していた女性が、俺の知ってる人だった」


部下 :
「ええっ!」


マネージャー :
「しかも、俺が20歳のとき、真剣に結婚を考えた相手だ」


部下 :
「えええええ……」


マネージャー :
「驚いた。本当に驚いた。そして、どうやら彼女には、20歳になる娘がい
ることもわかった」


部下 :
「本当ですか? その女性と話をしたんですか?」


マネージャー :
「いや、俺がトイレの個室に入っているときに、偶然、他の清掃員と話して
いるのを聞いてしまった」


部下 :
「おおおおおお……」


マネージャー :
「まいったよ」


部下 :
「まいった……って、課長はまだその女性のことが忘れられないからです
か?」


マネージャー :
「それもあるが」


部下 :
「他に、何かあるんですか?」


マネージャー :
「実は、その娘さん、俺の子かもしれないんだ」


部下 :
「えっ……!」


マネージャー :
「……」


部下 :
「そ、れ、は」


マネージャー :
「さすが、『聞き上手』だな。すごく関心をもって聞いてくれる」


部下 :
「だ」


マネージャー :
「……」


部下 :
「だ、誰だって、関心もつと思います。こんなドラマティックな話なら」


マネージャー :
「先週、成人式があった」


部下 :
「そういえば、そうじゃないですか! そのトイレの人の娘さんの成人式
が!」


マネージャー :
「トイレの人って」


部下 :
「すみません、つい……」


マネージャー :
「そうだよ。その娘さんの成人式が先週あった。でも、どうやらその『トイ
レの人』はお金に困っていたようだった。それも個室の中でこっそり聞い
た話だ」


部下 :
「お金に、困ってたんですか」


マネージャー :
「うん。いろいろと事情があるんだろう。今はパートナーがいないような口
ぶりだった」


部下 :
「ああ……。なんと、信じられない」


マネージャー :
「だから、俺は我慢できず」


部下 :
「我慢できずって、課長……?」


マネージャー :
「俺は先週、その『トイレの人』に話しかけた」


部下 :
「ええーーっ! 本当ですかっ」


マネージャー :
「すごく勇気が要った」


部下 :
「そ、それでどうなったんですか? その方は課長に何と言ったんです
か?」


マネージャー :
「急かすなよ」


部下 :
「だって、はやく続きが聞きたいじゃないですか」


マネージャー :
「さすがだな。本当に君は『聞き上手』だ」


部下 :
「何とでも言ってください。とにかく続きを聞かせてください。それで、そ
の『トイレの人』は何と言ったんですか?」


マネージャー :
「いや、何も」


部下 :
「え」


マネージャー :
「『トイレの人』は、俺の顔を見るなり顔を真っ赤にして、トイレを飛び出
していった」


部下 :
「えぇ……」


マネージャー :
「今日も午前中、Y商事へ行ってみたんだが、会えなかった。他の清掃員の
女性に声をかけたら、どうも先週、辞めたらしいって」


部下 :
「そ……」


マネージャー :
「……」


部下 :
「そんな、そんな、そんな……」


マネージャー :
「いいリアクションだ」


部下 :
「課長、私は何と言ったらいいんでしょう」


マネージャー :
「いや、いいよ、それで」


部下 :
「え」


マネージャー :
「こんなこと、なかなか他人に言えないじゃないか。それに聞いてもらって
も、無関心な素振りをされたらわびしい気持ちになる。君みたいなリアクシ
ョンをとってもらうと、何だかすごく安心する」


部下 :
「も、もうその女性には会えないんですか?」


マネージャー :
「会えないだろう。『トイレの人』にも、その娘さんにも、だ」


部下 :
「何とかできないんですか? だって、その娘さん、ひょっとしたら課長の
お子さんかもしれないんでしょう?」


マネージャー :
「そうだけど」


部下 :
「よくないですって、このままじゃあ」


マネージャー :
「いいんだ」


部下 :
「そんな!」


マネージャー :
「君がすごく『聞き上手』だということが、本当によく理解できた。お客様
のところへ行っても、それだけ『聞き上手』だと、さぞかしお客様との関係
構築は楽だろう」


部下 :
「いや、そんなことはないと思っていたのですが……。ありがとうございま
す。でもそんなことよりも……」


マネージャー :
「いいんだ」


……私は過去、青年海外協力隊でラテンアメリカにいたせいもあり、

日本人の「リアクションの薄さ」がすごく気になります。

「リアクション芸人」と呼ばれる、大げさなリアクションをとることを「売
り」にしている芸人の方がいますが、そこまでやれとは言いません。

しかし一般的な日本人なら、おそらく多少オーバーなリアクションをしたとし
ても、

本人が想像しているより、他人は違和感を持たないものです。

「えええー!」「そうなんですかっ?」「すっっごいですねー」と、

少し大仰な反応をして、相手とペーシングしてみてはいかがでしょうか。


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【編集後記】

先日、名古屋の繁華街「栄」を夜に歩いていました。

寒風が強く頬を打ち付けるような夜で、私は体を縮ませて歩いていました。

そんな夜に、制服を着た高校生風の男女たちが、

阪神大震災と、東日本大震災で親を亡くした子供たちへの経済的援助を大声で
訴えていました。

道ゆく人々は、ほとんど肩をすぼめながら歩き去っていきます。

私はキャリーバッグをがらがらと引っ張りながら近づき、

200円や300円ぐらい寄付しようと財布を開きました。

しかしながら、小銭入れの中には1円玉や5円玉しか入っていないのです。

強い風に髪の毛をさらされつづけたのでしょう。髪をボサボサにした女学生が、

「はんしん、あわーじ、だいしんさいからー! もぉーーすぐ、じゅうはちね
んが、たとーとしていまーーーーすっ!!!! じしんでぇー、おやをーなく
した、こどもたちにぃーーー……」

と大声を張り上げている横で、

私みたいな40代半ばのおっさんが、1円や5円玉を募金箱に入れるわけには
いかないと思い、

財布の中にあった1000円札を渡しました。

「おおっ! せんえんだっ!」

「せんえんだ!」

「おさつだ、おさつっ!」

と小さい声でささやきあう高校生たちの声を背中で受け止めながら、私はその
場を後にしました。

ところが、私の財布の中にあったお金はその千円札が最後の1枚。

「栄」から「名古屋駅」に帰るのに2駅あります。

地下鉄に乗ろうとしたのですが、お金がありません。駅員にSUICA(スイ
カ)を見せたのですが、

「それはJRでしょ」

とぶっきらぼうに一蹴され、

タクシーをつかまえて乗ろうとしましたが、「クレジットカードは使えないよ
っ!」

と不機嫌そうに運転手から怒られ、途中で降ろされました。

仕方なく、栄から名古屋駅まで、風によって痛む頬をさすりながら30分ぐら
いかけて歩いたのですが、

よくよく考えてみると、

来月の2月10日は、生涯2度目のマラソンに出場するのです。

そして3月には、名古屋シティマラソンではじめての「ハーフマラソン」に挑
戦します。

「ラク」したらダメだなー。ラクしようとばかり考えていたら、心も体も鍛え
られないからなー

などと思い、がらがらとキャリーバッグを引きずりながら、「なんちゃってウ
ォーキング」して帰りました。