2013年5月9日

どうして「ノイズ」は人を優柔不断にさせるのか?【譲歩の返報性】

● 今回のテクニック:【譲歩の返報性(3)】

譲歩の返報性とは、「返報性の原理」のひとつ。

相手に譲歩することで、相手もこちら側に譲ってくれる可能性が高まる。

相手とペースを合わせる「ペーシング」の基本。

コミュニケーション相手の言い分をまず受け止めることは、こちらの主張をい
ったん飲み込んで譲歩することと似ている。


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● 今回のコミュニケーション例


部下 :
「恥ずかしいことですが、この一年、本を読むことがとても少なくなってい
ます。課長にいろいろ紹介してもらった本も、ゴールデンウィーク中、なか
なか読めずにいて」


マネージャー :
「時間の使い方がうまくいかないか」


部下 :
「はい。家にいるときも、テレビなど観ていないのですが……」


マネージャー :
「スマホか?」


部下 :
「う……ん、そうですね。課長に指摘されて、よくわかりました。家にいる
ときも、ずっとスマホを眺めてるんです。子供がいても、ずっとスマホを」


マネージャー :
「マズイな」


部下 :
「よくよく観察してみると私の妻もそうです。食事をし終わったあと、風呂
に入ったあと、寝る前……ずっとスマホを見ています。中学1年の息子は、
パソコンで何か動画を見てるようで」


マネージャー :
「うーん。なんか、こう言ったら申し訳ないけど、気持ち悪いな」


部下 :
「気持ち悪いです、我が家は、本当に」


マネージャー :
「最近、意思決定できなくなってるだろ?」


部下 :
「え?」


マネージャー :
「やたらと優柔不断だよ。先日、会議で決まった販促チラシの件、あれはど
うなった?」


部下 :
「すみません、まだ部下の意見をまとめていません」


マネージャー :
「いつ、まとめる?」


部下 :
「ええっと……。なかなか全員のスケジュールを合わせることができないの
で」


マネージャー :
「なかなかスケジュールを合わせられないんだね? ま、それはいいとして、
じゃあ、いつスケジュールを合わせる?」


部下 :
「そういえば、うちの新人のスケジュール管理ソフトがまだインストールさ
れていないようです」


マネージャー :
「それはいつの話だ?」


部下 :
「ええっと……。いつでしょう……?」


マネジャー :
「4月に入社したときからだろう? 今にはじまったことじゃない。ゴール
デンウィークが明けてもまだインストールされてないのか?」


部下 :
「すみません。すぐにシステム部に対応してもらいます」


マネジャー :
「すぐにって……。1ヶ月以上過ぎてるだろう? 1年の【12分の1】が
もう過ぎてしまってる」


部下 :
「はい……」


マネジャー :
「その新人のスケジュール管理ソフトがインストールされないと、販促チラ
シのことを話し合うこともできないのか?」


部下 :
「いや、そういうわけじゃないんですが……。そもそもですね、この販促チ
ラシについて、そんなに早急に話し合う必要があるのかな、と思うんです。
なぜかというと……」


マネジャー :
「もういい、もういい!」


部下 :
「え……」


マネージャー :
「君は、何を決断しなければならないのかに悩んでいるのではなく、今この
場で決断することから逃げているだけだ」


部下 :
「……」


マネージャー :
「だからいちいち、今この場で決断しなくてもいい理由を私に話したくなる
のだ」


部下 :
「すみません」


マネージャー :
「私が責任をとる。決断したまえ。いつみんなを集めて、販促チラシについ
て話し合うんだ?」


部下 :
「明日……。明日の朝、やります。部下のひとりはいませんが、電話で連絡
をとります。ですから、明日の午前中には決めます」


マネージャー :
「なァ、この携帯電話を見ろ」


部下 :
「……?」


マネージャー :
「私の携帯電話だ。シニア層が使うような、単機能の携帯電話だ」


部下 :
「はい」


マネージャー :

「俺が携帯電話で使う機能は、通話とメール。これだけだ」


部下 :
「WEBの閲覧もできますよね?」


マネージャー :
「その機能は削除した」


部下 :
「えっ! 削除?」


マネージャー :
「あればあったで使うだろう、という機能は全部取り除いた」


部下 :
「しかし」


マネージャー :
「あったらあったで使うものというのは、なかったらなかったで使わないも
の、という意味だ」


部下 :
「でも、せっかくついている機能を取り除く必要はないと思いますが」


マネージャー :
「俺は仕事してんだよ」


部下 :
「はい……」


マネージャー :
「仕事において、なかったらなかったで必要のないものは、要らない。もっ
と必要なのは、時間と心の余裕だ」


部下 :
「……」


マネージャー :
「なかったらなかったで必要のないものは、ノイズだ」


部下 :
「ノイズ、ですか……。確かにそうですね。ゴールデンウィーク中、何冊か
ビジネス書を読もうと思ったんですが、結局はスマホで使えるアプリ集が掲
載されている雑誌を読みあさって、いろいろと試してばかりいました」


マネージャー :
「楽しかったか?」


部下 :
「楽しかったです。スマホ一台で、こんなにいろいろなことができるとわか
って」


マネージャー :
「そうか」


部下 :
「でも、むなしいですね。本当にむなしいですね……。やらなくちゃいけな
いこと、全部先送りしている気がします」


マネージャー :
「家族との会話も?」


部下 :
「はい。新人を含めて、チームの仲間とのコミュニケーションもドンドン減
ってます」


マネージャー :
「なあ。君のスマホを、私が使っている単機能の携帯電話に変更しろ、とは
言わない」


部下 :
「はい」


マネージャー :
「でも、君のスマホのWEB閲覧のアプリは削除したらどうだ?」


部下 :
「え……!」


マネージャー :
「何か不都合があるか?」


部下 :
「……」


マネージャー :
「あるか?」


部下 :
「いざとなったらパソコンも持ち歩いているわけですから、そちらでWEB
を見ることはできます。しかし、それはとても面倒で……」


マネージャー :
「面倒ノイズが発生するだろう? その面倒ノイズが、インターネットから
侵入してくるノイズを打ち消してくれる」


部下 :
「ノイズが、ノイズを……」


マネージャー :
「それに、君が言う『いざ』というときって、どういうときだ? 一日の中
でそんなに『いざ』というときがあるのか?」


部下 :
「な、ないです……」


マネージャー :
「仕事で利用するのに、スマホでWEB閲覧をしなければならないタイミン
グってどういうときだ? そんなにあるか? ほとんど遊びだろう」


部下 :
「うーん……」


マネージャー :
「君はネットを通じて誰とつながっている? チームの仲間とか? 家族の
心とつながっているか?」


部下 :
「ええっと……。私がつながっているのは、課長の言う『ノイズ』と、なの
かもしれません」


マネージャー :
「本当は、全員に単機能の携帯電話に変えてほしいんだよ」


部下 :
「わ、わかりました。WEB閲覧用のブラウザーを削除します。」



……前回のメルマガに書きましたが、2013年5月31日(金)、いよいよ
シリーズ第3弾「絶対達成する決断力のつけ方」が発売されます。

そこで紹介されている「ノイズキャンセリング仕事術」では、3種類のノイズ
『B・A・Dノイズ』を紹介し、

それぞれどのような「逆ノイズ」を発生させて、無理やりノイズをカットさせ
るテクニックを披露しています。

決断力をアップさせるために、「ノイズ」は大敵ですから。

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【編集後記】

ゴールデンウィーク最後の日(5月6日)の夜、

家族で外食へ出かけ、車で帰宅する途中、私と妻とで学生時代の話をしていま
した。

その中で、妻が私に、

「別の高校へ行っていたら、もっと違う人生を歩んでいたと思う? もっと凄
くなっていたと思う?」

このように尋ねてきました。

もっと違う人生を歩んでいただろうなとは思いますが、「もっと凄くなってい
たか?」という部分に私は引っかかり、

脳のブースターが働きました。

そして、

「俺の人生はまだ終わってないぜ。これから、もっともっと実現することがあ
る」

と、私は強い語気で答えていました。

他の高校へ行っていれば、大学にも行ったかもしれないし、別の出会いもあっ
たかもしれない。

別の就職先を選び、青年海外協力隊に参加することもなく、知的障がい者のボ
ランティア活動に参加することもなく、

妻との出会いもなく、子どもたちの誕生を祝うこともなかったかもしれません。

コンサルタントになることもなく、このようなメルマガを書いたり書籍を出版
することもなかったでしょう。

44歳にもなれば、これまでの過去を振り返り「あのとき、ああしていれば、
こうしていれば……」と思い返すことも多いでしょう。

しかし私は違います。

過去を振り返ることはほとんどありません。過去の自分の決断に対して、評価
するのまだ早いと、無意識レベルで受け止めているのです。

過去の決断に対するその結末を、私はまだ見ていない。

だから、自分が決めたことの良し悪しをいまだにジャッジメントできないので
す。

「決断した内容」について、とやかく言うことは誰にでもできます。

しかし「決断プロセス」が正しかったのならば、後悔することはありません。

私が選んで入った学校が良かったどうか、その道が正しかったかどうかは、こ
れからの私の未来が決定付けるわけです。

まだまだこれからです。

5月31日に発売される「絶対達成3」は、行動経済学の理論を多分に盛り込
んだ内容となっているのですが、同様に「熱い」本でもあります。

5月末まで、少々暑苦しいメルマガを書いていくと思いますが、「決断力」を
アップさせるために、ロジカルなメソッドのみならず、熱い気持ちも不可欠。

ぜひ、お付き合いください。