2013年9月18日

ストレスから解放されるには「8ヶ月」かかる【ロー・ボール・テクニック】

● 今回のテクニック:【ロー・ボール・テクニック(12)】

ロー・ボール・テクニックとは、まずは相手が受け取りやすいボールを投げて
から、徐々にオプションを増やしていく方法である。

説得される側は、気がついたときには最初の条件よりも吊りあがっているため、
騙されたと感じるかもしれず、リスクは高い。

フット・イン・ザ・ドア・テクニックよりも強力な説得技術と言われているが、
多用は禁物である。


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● 今回のコミュニケーション例


マネージャー :
「10月から新しい会社か」


部下 :
「はい。今度はハウスメーカーの営業です」


マネージャー :
「10年近く事務職を経験して、次は住宅メーカーの営業……。楽しみ
か?」


部下 :
「……」


マネージャー :
「次の職場では、本当に頑張ってほしい」


部下 :
「……ありがとうございます」


マネージャー :
「旦那さんとは?」


部下 :
「もういません。放浪癖があるのです。今年の1月に離婚してからも何度か
娘に会いにきたのですが、今はもう」


マネージャー :
「消息は?」


部下 :
「知りません。アジアのどこかにいるのだと思います」


マネージャー :
「何と言ったらいいか」


部下 :
「彼が残した借金は、家を処分することで何とか目処が立ちました。いろい
ろとご迷惑をおかけして……」


マネージャー :
「いや」


部下 :
「家財道具も車も全部失いました。娘が誕生日にもらった『ちいぽぽちゃ
ん』のセットもネットオークションで売りました」


マネージャー :
「……」


部下 :
「今のアパートに引っ越すときに知り合った不動産会社の方が、今度のハウ
スメーカーを紹介してくださったんです」


マネージャー :
「消費税増税前だから、住宅は売れている。どこの会社も営業が欲しいだろ
う」


部下 :
「とにかく、働いてお金を稼がないとやっていけませんから」


マネージャー :
「歩合制なのか」


部下 :
「確か、そうだと思います。頑張れば、月に40万とか50万は稼げると聞
きました」


マネージャー :
「……本当か?」


部下 :
「……」


マネージャー :
「なァ、そのハウスメーカー、本当に信用できるところなのか? 名前も聞
いたことがない」


部下 :
「採用面接をしてくださった方は、優しくしてくださいました」


マネージャー :
「遅くはない。わが社に残らないか」


部下 :
「……」


マネージャー :
「それだけの気持ちがあるなら、わが社で営業をやってくれてもいい。これ
までの事務仕事に比べれば手当てが増える」


部下 :
「40万も50万も稼げるのですか?」


マネージャー :
「……いや、そこまでは」


部下 :
「とにかく、私にはお金が必要なんです。夜の仕事をしようかと悩んだぐら
いなんです。それに比べたら、ハウスメーカーの営業ぐらいできます」


マネージャー :
「すぐには難しいだろうが、30万から35万ぐらいは」


部下 :
「そういう会社には、いられません」


マネージャー :
「バカヤロウ!」


部下 :
「……え」


マネージャー :
「君は、大切なことを忘れていないか」


部下 :
「な……! どうしてそんなことを言うんですか。私がどんな思いをして毎
日を暮らしていると思うんです? どんな気持ちで荷造りし、今のアパート
に引越したのか想像できますか」


マネージャー :
「……」


部下 :
「娘の手をひいて、何年も会っていない親族をまわり、着るものだけでいい
から分けてもらえませんかと頭を下げてきた私の気持ちが、わかってたまる
ものですか!」


マネージャー :
「それじゃあ、なぜ、送別会のとき、私たちからの贈り物を受け取らなかっ
た?」


部下 :
「……!」


マネージャー :
「3階のフロアーの女子たちがお金を出し合い、娘さんのランドセルでも買
ってくださいといって渡した商品券も受け取らなかった」


部下 :
「……」


マネージャー :
「意地か?」


部下 :
「わかりません」


マネージャー :
「君の旦那が出ていった理由は知っている」


部下 :
「もちろん、すべて彼の責任ではありません。私は彼が悪いだなんて一度も
言っていません」


マネージャー :
「どうして素直になれない?」


部下 :
「誰も彼も、私に愛想をつかすんです」


マネージャー :
「わかった」


部下 :
「……」


マネージャー :
「……」


部下 :
「……そろそろ、私、行かないといけません」


マネージャー :
「ああ」


部下 :
「お世話になりました」


マネージャー :
「ロッカーにあるものは全部持っていってくれ」


部下 :
「はい。事務所を出るときにすべて持って出ます」


マネージャー :
「この紙袋を使いたまえ」


部下 :
「……こんな、大きな紙袋に入るものなどロッカーにありません」


マネージャー :
「わからないじゃないか。紙袋ぐらいは受け取ってくれてもいいだろう?」


部下 :
「はい……」


マネージャー :
「いいか。君のロッカーにあるものは、全部、持ち帰ってくれよ。ロッカー
の上に置いてあるものも君のものだ。会社に残してもらうと困る」


部下 :
「……え」


マネージャー :
「君が素直な女だとは、誰も思っとらんよ」


部下 :
「……」


マネージャー :
「10月から、慣れない仕事が待っている」


部下 :
「……はい」


マネージャー :
「どんなに歯を食いしばっても、慣れないものは慣れない。ただ、8ヶ月間
は踏ん張れ」


部下 :
「8ヶ月」


マネージャー :
「人は意識して行動しようとすると、どうしてもストレスがかかる。葛藤を
覚えるものだ。体が馴染まないからだ」


部下 :
「……」


マネージャー :
「しかし、どんなに『やらされ感』を覚えようとも、繰り返し繰り返し意識
し、行動をすることでマインドチャージされ、無意識のうちにできるように
なる」


部下 :
「無意識のうちに」


マネージャー :
「そう。それが無意識的有能状態のことだ。イヤイヤであっても最長8ヶ月
で習慣化される。もちろん、心身ともに苦痛を感じることであれば別だが、
単純に慣れないことだと、半年近くで普通はストレスから解放される」


部下 :
「すごく、気持ちがラクになりました」


マネージャー :
「すぐに結果が出なくとも焦るな。慣れないことをするときは肩に力が入る。
君はすぐに片意地を張る癖がある。しかし緊張しているときに成果など出な
い。勝負は8ヶ月以降だ」


部下 :
「はい」


マネージャー :
「3年は頑張ってこい。3年したら、またわが社に戻って来い」


部下 :
「部長」


マネージャー :
「そのときは、俺が社長になってる」



……拙作『絶対達成マインドのつくり方』で紹介した「学習の4段階」は、多
くの人の心のよりどころになっているようです。

今でもフェイスブックなどで、多くのメッセージをいただきます。

今の自分が、「1.無意識的無能」「2.意識的無能」「3.意識的有能」
「4.無意識的有能」の4段階のうち、どの状態にあるのか?

それがわかるだけで、かなりの葛藤・ストレスから解放されます。

なぜ先延ばしをしてしまうのか? なぜ結果が出ないのか? なぜモチベーシ
ョンが上がらないのか?

この小さな葛藤の連続が、人の心を蝕んでいきます。

同名タイトルのセミナーも常に満員御礼。このメルマガ読者すべての人に読ん
でもらいたいと思っています。


■「絶対達成マインドのつくり方」
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/447802149X/mysterycon0c-22/ref=nosim


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【編集後記】

昨日の号外メルマガで紹介した「圧倒的な知識で人を動かす話し方」というコ
ラムは、過去2番目に多いアクセスを記録しました。

あのコラムで紹介した、

「第3の知識(言語表現しづらい技能)」は、まさに今回のメルマガで紹介し
た、

「無意識的有能状態」となっているときに体得している「手続き知識」のこと
です。

コラムでは紹介程度しか書かれていませんが、「第3の知識」を得るためには、
『絶対達成マインドのつくり方』に書かれている「学習の4段階」が役立ちま
す。

これを知ることで、いかに「モチベーション」という言葉が人を動かすうえで
無意味な存在か理解できることでしょう。

『絶対達成マインドのつくり方』に書いているとおり、

「モチベーション」という言葉が日本のメディアで取り上げ始めたのは、20
01年以降と言われています。

「モチベーション」に振りまわれず、やるべきことを当たり前にできる習慣—
—手続き知識を少しでも多く身につけていきたいですよね。

たとえ最長「8ヶ月」かかったとしても、

ストレスから解放される一番の近道だと思うからです。