2014年1月27日

「過剰承認」が人も組織もダメにする【刺激馴化】

● 今回のテクニック:【刺激馴化(8)】

刺激馴化とは、刺激にさらされつづけるとその刺激に順応してしまい、徐々に
特定の反応を示さなくなる現象をいう。

どんなに嫌な刺激も、馴れることで回避されていく傾向にある。

たとえば、最初は気が進まない事柄であったりしても、無理やりにでもスター
トして回数を重ねてしまえば、自然と体が慣れてしまって嫌な気分にならなく
なったり。(たとえば早起き。ジョギングなど)

たとえば、最初は怖い人だなと思い込み、できれば会わないままにしておきた
いと考えていた人とも、面談回数を重ねていくことによって、それほど気にな
らなくなったりすることがある。


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● 今回のコミュニケーション例


部下 :
「4月から課長に昇進すると聞いて、週末に管理者研修を受けてきました」


マネージャー :
「おう。それでタメになったか」


部下 :
「はい。部下を承認しろとやたら言われました」


マネージャー :
「おう。キチンと承認しろよ、部下を」


部下 :
「はい。でも……やってるつもりなんですけどね」


マネージャー :
「どういうときに承認してるんだ」


部下 :
「かなり頻繁にしています。毎日のように褒めようと心に決めたんです」


マネージャー :
「俺の質問に答えろよ、俺が話していることがキチンと伝わっていないんだ
ったら、管理者研修の講師が言っていたこともちゃんと伝わってないと受け
止めるぞ」


部下 :
「あ、すみません……。質問って言いますと?」


マネージャー :
「だから、どういうときに承認してるんだって質問したんだ。お前の答えは、
『頻繁にしてます』だっただろ」


部下 :
「ええと……」


マネージャー :
「ひょっとして俺の質問が理解できない?」


部下 :
「いや、そういうわけじゃ……。でも、どういうときに承認するかって言わ
れても」


マネージャー :
「じゃあ、どういう風に部下を褒めてるんだ」


部下 :
「『いいねェ』『よくやってるねェ』『すごいねェ』とか言ってます」


マネージャー :
「おう。いいじゃねえか。それでいいんだよ。……で、俺の質問は、そうい
う声掛けをどういうときにしてるんだ?」


部下 :
「ええ……?」


マネージャー :
「なぜ俺の質問がわからんのだ? たとえばお前の部下が会社に出勤してき
たときに『いいねェ』『よくやったねェ』と言うわけか?」


部下 :
「いやいやいや」


マネージャー :
「たとえばお前の部下が、期限どおりに資料を提出してきたら『いいねェ』
『すごいねェ』って言うのか?」


部下 :
「あ、はい。もちろんです。期限どおりじゃなくても、資料を提出してきた
ら言います。そう言わないと、資料さえ提出しないので」


マネージャー :
「……」


部下 :
「……何か、おかしいでしょうか?」


マネージャー :
「お前もう1年、主任やれ。課長昇進は、まだ早い」


部下 :
「え!」


マネージャー :
「それじゃあ、部下たちが認知的不協和を起こすはずだ。最近、お前の部下
たちの言動がおかしいと噂されている」


部下 :
「え……」


マネージャー :
「思考が反転してる。承認ってのは普通、組織に貢献してはじめてされるも
のだ。にもかかわらず、承認されないと組織に貢献できない、という反転思
考になってる」


部下 :
「……」


マネージャー :
「とてもマズイ空気だ。極端な話、労働がなくとも労働対価……すなわち給
料は会社から支払われる。だから、対価に見合った貢献をするのは当然だ」


部下 :
「……」


マネージャー :
「やって当然のことを承認されていると、何をして承認されるのかが理解で
きなくなる。これが認知的不協和だ。貢献レベルと承認レベルがマッチして
いないと、本人たちも正しい承認欲求を満たすことがない」


部下 :
「正しい承認欲求が……」


マネージャー :
「おう。そして承認慣れしてくると『刺激馴化』を引き起こす。その刺激に
慣れてきて、承認を承認だと思わなくなる。さらに強い承認がないと、動け
なくなり、ドンドン人は怠惰になっていく」


部下 :
「そういえば最近、ドンドンやるべきことができなくなっていってる気がし
ます。その割に、会社に対する不満もなぜか増えているような……」



……どういうときに人を承認すべきか、どのようなレベルの承認なのか。そし
て何に対して本来人は承認すべきなのか。

最近「承認飢餓」という言葉を聞きます。

「承認欲求」に関する過剰反応も増えてきたため、正しい承認とは何か、正し
くない承認とは何かについて書いてみました。


■「職場における正しい承認、正しくない承認」
http://bylines.news.yahoo.co.jp/yokoyamanobuhiro/20140127-00032011/

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【編集後記】

昨日、日曜日、私は父に2月から週3回の「デイサービス」に通ってもらうと
いう話をしました。

要介護認定が出たからです。

26日の日曜日にその話をすると決めてから、ずっと悶々とした日々を過ごし
てきました。

コンサルティング先でも、研修先でも、相手が社長であろうが、ベテランの部
課長であろうが、言うべきことは言う。

それが私の信条ですが、父の前では葛藤しました。

毎日朝から晩まで酒を飲み続ける父。誰の言うことを聞かないと思われた父で
したが、私が真面目な顔で話すと、すんなり受け入れました。

デイサービスというのがどういう場所なのか、あまり理解できない風でしたが、
毎日お酒を飲み続ける生活はもうできなくなる、ということぐらいは理解でき
たと思います。

私の話し方が不十分だったようで、見るに見かね、隣に座っていた妻が、「デ
イサービスで何をするのか。どんな場所なのか。何のために行くのか」など、
事細かく父に説明してくれました。

妻のしっかりとした話しぶりを横で聞いていて、私は涙が出そうになりました。

いろんな感情がこみあげてきたのです。

何がいいのか悪いのか今はわかりませんが、家の中で酒浸りになっている父が、
週3回でも外へ行き、少しでも体を動かし、他人と交流することで、少しでも
人間らしい生活を取り戻してくれたらと思います。

最近、よく思うことがあります。

私は現在、仕事に関する悩みに心打ちのめされることはなくなりました。

その分、家族や親族、地域社会へと意識を振り分けることができます。

今年45歳になる私にとって、そのことはとても重要なポイントであると、ひ
しひしと感じるようになってきているのです。