2014年5月12日

目標達成よりも大切なルール【刺激馴化】

● 今回のテクニック:【刺激馴化(9)】

刺激馴化とは、刺激にさらされつづけるとその刺激に順応してしまい、徐々に
特定の反応を示さなくなる現象をいう。

どんなに嫌な刺激も、馴れることで回避されていく傾向にある。

たとえば、最初は気が進まない事柄であったりしても、無理やりにでもスター
トして回数を重ねてしまえば、自然と体が慣れてしまって嫌な気分にならなく
なったり。(たとえば早起き。ジョギングなど)

たとえば、最初は怖い人だなと思い込み、できれば会わないままにしておきた
いと考えていた人とも、面談回数を重ねていくことによって、それほど気にな
らなくなったりすることがある。


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● 今回のコミュニケーション例


マネジャー :
「先日、依頼をした今期の予材管理表は書いたのか?」


部下 :
「あ、いえ。まだです」


マネジャー :
「4月中に提出するはずだったじゃないか。はやく出してくれ」


部下 :
「ええっと……。ところで、J社の案件、決まりました」


マネジャー :
「お、そうか……! それは凄い。決まらないと思っていたのに。受注額は
いくらだ?」


部下 :
「1870万円です」


マネジャー :
「え、見積りは1200万円ぐらいだったろう?」


部下 :
「他部署のキーパーソンも押さえて、提案内容を膨らませたんです。他社に
流れているものも、こちらでやらせてもらえるよう交渉しました。先方の部
長も喜んでいます」


マネジャー :
「そうか、そうか。凄いな」


部下 :
「ありがとうございます」


マネジャー :
「相変わらずだなァ」


部下 :
「今期も目標の150%は超えるようにします」


マネジャー :
「凄い! 本当に君は頼りになる」


部下 :
「ありがとうございます。それじゃあ、これからH社に出かけます」


マネジャー :
「こんな時間からか?」


部下 :
「相手の課長と飲んでこようと思うんです。H社には、7000万円規模の
予材が埋蔵されていると見込んでいますから」


マネジャー :
「そうかそうか。それは知らなかった。さっき言った予材管理表にも、その
H社のことを記しておいてくれ」


部下 :
「あ、はァ……」


マネジャー :
「今夜、飲んでもいいが、明日の朝にはさっき言った予材管理表は提出して
くれよ」


部下 :
「明日の朝、ですか?」


マネジャー :
「当たり前だ。さっきも言った通り、4月中に出せと言ったじゃないか」


部下 :
「……」


マネジャー :
「なんだ?」


部下 :
「はっきり言わせていただきますが、私には必要ないと思います」


マネジャー :
「は?」


部下 :
「あの管理表は、目標を100%達成させるために管理するシートです。よ
くできたシートだとは思いますが、私には不要でしょう。なくても目標を大
きく超えるほど達成しているからです」


マネジャー :
「何を言ってるんだ、君は」


部下 :
「先ほども言ったとおり、今期も150%以上は達成しそうなんです。あの
シートを書くと、もっと私の売上が伸びるんですか?」


マネジャー :
「は?」


部下 :
「それとも、私が将来、管理者になるために必要だから、このスキルを身に
着けさせようとしているんですか? それなら不要です。私なりのやり方が
ありますし、そのやり方も整理できつつありますから」


マネジャー :
「さっきから何を言ってるんだ」


部下 :
「え」


マネジャー :
「ごちゃごちゃ言ってないで、予材管理表を出せよ。明日の朝までに」


部下 :
「いや、ですから、私には必要ないでしょうと、申し上げてるんです」


マネジャー :
「いいから出せって」


部下 :
「『いいから出せ』って、そんな言い方がありますか……。課長のくせに、
部下とそういうコミュニケーションの取り方しかできないんですか?」


マネジャー :
「何をごちゃごちゃ言ってるんだ?」


部下 :
「何をって……」


マネジャー :
「先月、4月中に出せと言ったとき、君は『はい、出します』と言ったんだ
ぞ。ゴールデンウィークが明けたその日にも指摘しただろう? そうしたら
君は『すみません、すぐにやります』と言ったんだ」


部下 :
「そ、それはそうですが……」


マネジャー :
「勝手に先送りしつづけたあげく、『やっぱり私には必要ない』だなんて理
屈が通るわけないだろう」


部下 :
「う……」


マネジャー :
「君がダントツのトップセールスだったため、昨年度までの課長は何も言わ
なかっただろうが、私は違う。私がもっとも重要視するのは『場の空気』だ
からだ」


部下 :
「空気……」


マネジャー :
「そう。『場』を悪くするのは、決まって『作話(さくわ)』だ。『やらな
い理由』『できない理由』を後から意味づけをする」


部下 :
「……」


マネジャー :
「ルールはルールだ。スポーツもビジネスの世界でも同じ。どんなに能力が
高くても、スバ抜けた成績を出している人でもルールは守ってもらう。規律
には従ってもらう」


部下 :
「し、しかしですね」


マネジャー :
「繰り返すが、ルールはルールだ。どんな小さなルールでも、一度ルールを
破ったら癖になる。『ルールを破るという刺激』に慣れていくんだ。それは
させない」


部下 :
「んん」


マネジャー :
「明日の朝までだ」


部下 :
「……」


マネジャー :
「君の目標達成率が150%から100%までダウンしようが、関係ない」


部下 :
「……はい」


マネジャー :
「私はメチャクチャなことを言ってるわけじゃない。だからやってもらう。
それだけだ」



……組織の空気を悪くするのは、何と言っても「作話(さくわ)」です。

「作話」とは何か? なぜ「作話」は引き起こされるのか?

そして、組織に蔓延する「作話スモッグ」とは? その「スモッグ」をどのよ
うに浄化していくのか? どのように空気の入れ替えをするのか?

「人を変えるな。空気を変えよ。~ Teaching to the Air ~ 」

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【編集後記】

今日(5月11日(日))、とても珍しい体験をしました。これまでに一度も
ない体験です。今後もおそらくないでしょう。

子どもたちの運動会に参加し、私は保護者を対象とした「綱引き」と「玉入
れ」の競技に出場しました。

その「綱引き」のときの出来事です。

私は左肩を痛めていて、1年以上もリハビリのため通院しています。ですから、
できれば「綱引き」は出たくなかったのですが、

そのようなことを言える「空気」ではありませんでした。

地域のほとんどの「お父さん」がゼッケンをつけて並んでいる姿を見たら、出
ないわけにはいきません。総勢50名ぐらいいたでしょうか。

他のお父さんたちと一緒にゼッケンをつけ、整列し、綱の横に並びました。

無理をして肩を悪くしてしまったら、これまで通院してきた意味がない。力を
抜いて「綱引き」しよう。

「綱引き」の結果が、「赤」「白」それぞれのチームの勝敗に直結するわけで
はなく、運動会のただの余興だったので、力を入れる必要などありません。

そのように私はクールにとらえようとしました。

しかし、

できませんね……。

皆さんも綱引きをしたことがあるでしょう。「真剣にやらない」のが難しい競
技です。

号砲とともに、目一杯、綱を引きました。

誰もが「余興」だとわかっていても、「絶対に勝つ!」「負けないぞ!」「子
供たちの前でいいカッコしたい!」という「空気」になってしまっているから
です。

「わっしょい、わっしょいっ!」「わっしょい、わっしょいっ!」「わっしょ
い、わっしょいっ!」「わっしょい、わっしょいっ!」「わっしょい、わっし
ょいっ!」「わっしょい、わっしょいっ!」「わっしょい、わっしょいっ!」

……と、大声を出しながら綱を引いてしまいました。アドレナリンが出まくっ
ていますから、肩が痛いとか、肩が外れそうだとか、まったく自覚がありませ
ん。

力いっぱい、綱を引いていたら――!

なんと……

突然、綱が引かれる「抵抗」がなくなったのです。まるで、綱がすっぽ抜けた
かのような感覚を味わいました。

まさか、肩がはずれた……!?

私は後ろにひっくり返り、後ろで一所懸命、綱を引いていた別のお父さんにぶ
つかり、そのお父さんもひっくり返って、将棋倒しのようになりました。

もうもうと立ち込める、ものすごい土煙の中、

「申し訳ありません! 大丈夫ですか?」

と、後ろの方に言ったところ、何となく状況がつかめてきました。他の大勢の
方も全員、転んでいるのです。

小学校、全校生徒がいる前ですから、たちまち騒然としました。テントの中に
いた父兄の皆さん、学校関係者、地域の皆さん、もちろん子どもたちも、それ
ぞれ大騒ぎです。

その場で尻餅をついたり、将棋倒しの状態になり、重なり合ってひっくり返っ
ているお父さんたちの姿が目の前に、おぼろげに映ります。

風が強い日だったこともあり、数十名の男たちがいっせいに転んだこともあり、
とにかく舞い上がった土煙が凄い量でした。

綱引きをしている途中で、「綱」が真ん中から切れてしまったことが原因です。

綱引きの「綱」って切れるんですね。信じられませんが、実際に起こった出来
事です。

結局、勝敗つかず。引き分け。

参加したお父さんたちは誰もが「こんなこと、あるんだ……」「まさか綱がブ
チ切れるとは……」と、不思議そうな感想を言っていました。

誰も怪我をしなかったからよかったですが。綱が古かったのでしょうか。ちょ
っと怖いですね。