2014年5月8日

チームが本当の意味で崩壊する理由とは?【社会的手抜き】

● 今回のテクニック:【社会的手抜き(2)】

社会的手抜きとは、集団心理のひとつ。集団の構成員が増えれば増えるほど、
無意識のうちに「手抜き」をしてしまうこと。

「社会的怠惰」「傍観者効果」とも呼ばれる。

会議や商談など、人が増えれば増えるほど意見やアイデアが出づらくなるのは、
「社会手抜き」という集団心理が影響していると覚えておこう。


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● 今回のコミュニケーション例


マネジャー :
「驚いた。管理部の主任が辞めるらしい」


部下 :
「はい」


マネジャー :
「知ってたのか?」


部下 :
「Kさんは、私と同期入社ですから」


マネジャー :
「そうだったか。それにしても彼女が実家の跡取りだったなんて……。誰も
知らなかったよ」


部下 :
「……」


マネジャー :
「君は知っていたのか」


部下 :
「いえ。いま、知りました」


マネジャー :
「え?」


部下 :
「私は彼女から『もう辞める』としか聞かなかったですから」


マネジャー :
「『聞かなかっただけですから』って……。退職の理由を聞かなかったの
か?」


部下 :
「ええ。聞いていません」


マネジャー :
「ふーん……。なんか冷めてるな。同期なんだろう?」


部下 :
「課長」


マネジャー :
「なんだ」


部下 :
「……」


マネジャー :
「おいおい。真剣な顔で俺を見るなよ。まさか『実は私も辞めるんです』な
んて言わないだろうな」


部下 :
「……」


マネジャー :
「おいおい」


部下 :
「……」


マネジャー :
「おい、マジか」


部下 :
「はい。6月15日で退職します。昨日、部長にも相談しました。ゴールデ
ンウィーク中、家族とも相談して決めました」


マネジャー :
「まさかお前も、以前からやりたいことがあった、とか……」


部下 :
「そんな退職理由……。言い訳に決まっています」


マネジャー :
「ちょ、ちょっと待て。考え直せ。Kさんだって、当社の有望株で、将来の
幹部候補と言われていたんだ。君だってそうだろ。うちの営業部ではナン
バー1で」


部下 :
「……」


マネジャー :
「いま、当社がどういう状態にあるかわかってるはずだ。まだ30代前半の
君たちが立て続けに辞められたら、どうなるか……」


部下 :
「私はずっと言い続けてきました」


マネジャー :
「う……」


部下 :
「Kさんとも、そして今年の1月に辞めた生産管理部のY課長とも、ずっと
進言してきました。もっと組織一丸となって改革していきましょうと」


マネジャー :
「……そ、それは」


部下 :
「もう2年ほど前から、組織改革は待ったなしの状態でした。社長もずっと
そう言っておられました。誰だってわかっていたはずなのに、一部の反対意
見を押し返すことができず、ずーっと先送りにしてきました」


マネジャー :
「いや、あのね……。わが社はこれからなんだよ。こういうことは、いろい
ろと根回しが必要で……」


部下 :
「去年も同じ話をされていました」


マネジャー :
「……」


部下 :
「Y課長が辞めるとき、私はもう待ったなしだ。会社のことを真面目に考え
ている人たちが次々と辞めてしまうかもしれない。だからすぐに手を打ちま
しょうと言いました」


マネジャー :
「……」


部下 :
「そのための改革案も提出しました」


マネジャー :
「いろいろと人が増えて、大変だったんだよ……」


部下 :
「コスト削減といって生産部門の人を減らし、管理部は逆に増えています。
それで意思決定スピードがどんどん遅くなったんです」


マネジャー :
「な、何を言ってる! 管理部門はそれなりに人手がいるんだ。知りもしな
いのによく言うよ!」


部下 :
「いま、管理部はKさんが辞めてパニックになっています。どうしてです
か? あれだけ人を増やしたのに、Kさんひとりがいなくなっただけで、通
常業務ができなくなってきています」


マネジャー :
「……」


部下 :
「真面目にやっている人がバカを見るような組織にはいられません。昨日、
部長には泣かれましたよ。でも、もう待ちきれません。自分もダメになって
いきそうで怖いです」



……手を抜くつもりはなかった。しかし、人が多くなることで、なぜか無意識
のうちに手を抜いてしまう。これを「社会的手抜き」と言います。

いよいよ私の新刊『「空気」で人を動かす』が発売されます。

「社会手抜き」以外でも、いつの間にか組織の空気が汚れていく原因はありま
す。

知らず知らずのうちに、元に戻らないほど「場の空気」が悪くなるのです。だ
からこそ「空気」は恐ろしいと言えます。その要素を、新刊でご確認ください。


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【編集後記】

ゴールデンウィーク中の5月6日(火)、昔のクラスメートの結婚披露宴があ
りました。

これを機会に、ということで、昔のクラスメート12名が披露宴に集まりまし
た。

私も、結婚した友人も、クラスメートたちも同じ歳です。44歳。主役の新郎
をお祝いしたいという気持ちもありましたが、

それぞれクラスメートとも約25年ぶりに再会したわけですから、お互い「半
生」を振り返る機会にもなりました。

細かいことは書けませんが、お互いの仕事、家庭、子どものことなどを話し合
っていると「しんみり」とした気持にもなります。

クラスメートのうち、いろいろな事情で少なくとも2人はもうこの世にいなく
て、お祝いムード半分、人生の折り返し地点はもうとっくに過ぎたんだなとい
う気持ち半分を、分け合った形にもなりました。

そんな中、あるクラスメートとこんな会話をしました。17、18歳だったこ
ろは、そんなに仲良くしていた覚えがないのに、年齢を重ねるとお互い尖った
部分がなくなるものですね。

「横山ってさ、なんかスゲーらしいじゃん」
「すげーって……。別に俺のことはいいよ」
「青年海外協力隊に行った噂は聞いてたけど、その後、今の仕事に就いたの
か?」
「いや、まず日立製作所に8年ぐらい勤めて、それから今の会社に入った」
「へぇぇ。それで今はそんなに立派になったの?」
「立派って……。俺は、学校卒業してから地道にコツコツ仕事しているお前ら
のほうがよっぽど偉いと思ってるよ」
「俺はただの公務員だよ。ところで、なんでそんな畑違いなことやってるん
だ」
「いろいろあったんだ、俺も……。どん底を経験して、それで、今があるわけ。
話すと長くなる」
「どん底ってお前……。いつの話だよ」
「うーん、日立辞めるときかなァ……。35歳ぐらいのとき」
「そんなどん底のときがあったんだったら、なんで俺らに声をかけないんだ?
そういうときに俺ら仲間がいるわけだろ?」

その言葉を聞いて私は絶句し、しばらく何も言えませんでした。40歳も過ぎ
ると涙もろくなります。

「あ、あのさ……。本当のどん底のときってさ、どうすればいいかなんてわか
んないもんなんだ。お前らに相談しようだなんていうことも思い浮かばないわ
け。わかる?」

そう言うと、彼は、随分と時間を置いてから、

「わかる……」

と言ったのです。すごくしんみりと「わかる」とだけ。

「なんか、わかる。そうそう……。そんなもんだよな」

と遠い目をしながら言ったのです。友人の結婚披露宴だというのに、元クラス
メートがあちこちで、こんな会話をしていたのでした。

前述したとおり、44歳にもなると、涙もろくなります。友人の新郎が最後に
挨拶をしているとき、ものすごく「ジーン」ときました。

クラスメートの連中も、みんな鼻をすすったり、おしぼりを目頭にあてたりし
ていました。

12歳の年下の女性と結婚した友人は、これから新しい人生のスタートをする
んだなァ。「人生の折り返し地点を折り返してしばらく経過した」という気分
に浸っていた私ですが、まだまだこれからだ。

自分の家族だけでなく、自分の部下たちの家族もあるし、過去を振り返って
「しんみり」するには早すぎる、そう思いました。