2014年8月28日

コミュニケーション能力と「予材資産」【バックトラッキング】

● 今回のテクニック:【バックトラッキング(19)】

バックトラッキングとは、NLP(神経言語プログラム)のペーシングでもよ
く使われる「おうむ返し」のこと。

相手の言葉をそのまま流用し、「質問形式」にして返す。こうすることで、相
手は「イエス」としか返答することができない。

イエスセットを効果的に実践するときに使うテクニックで、

上司や部下とのコミュニケーションのみならず、お客様や家庭などでも応用で
きる。

「……ですね?」「……ですよね?」と確認するように尋ねるのが基本。


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● 今回のコミュニケーション例


部下 :
「うまくいきませんでした……」


マネジャー :
「そうか。【うまくいかなかったんだね?】」


部下 :
「はい」


マネジャー :
「デートは何回目だっけ」


部下 :
「2回目です。映画の選択がマズかったのでしょうか」


マネジャー :
「【2回目で、映画の選択がマズかったと思っているんだね?】何を観にい
ったんだ」


部下 :
「『るろうに剣心』です」


マネジャー :
「【『るろうに剣心』なんだね?】。映画は観たことないけど、主題歌を歌
っているワンオクはいいよな」


部下 :
「まァ、はい。でも、そんなこと、どうでもいいです」


マネジャー :
「そうだよな。【『るろうに剣心』の主題歌を歌っているのがワンオクだっ
てことは、どうでもいいよね?】」


部下 :
「ええ。どうでもいいと思います。僕はワンオクよりマンウィズのほうが好
きですけどね。そんなことより係長、何が問題なんでしょう? 帰り際に夕
食を誘ったら、『もういい』って言われたんです」


マネジャー :
「【帰り際に夕食を誘ったら『もういい』って言われたんだね?】」


部下 :
「はい。あきらめず、もっとガンガン攻めたほうがいいんでしょうか。営業
もそうですよね。ガンガン攻めたほうが仕事とれますよね」


マネジャー :
「【恋も営業も、ガンガン攻めたほうがいいと思っているんだね?】」


部下 :
「係長だって、すごく攻めてるじゃないですか。営業成績はダントツだし」


マネジャー :
「【そうだね。俺はけっこう攻めてるよね?】」


部下 :
「はい。それに係長ってすごくモテるじゃないですか。学生時代からもモテ
モテだったんでしょう?」


マネジャー :
「それはちょっとわからないが……。恋愛で悩んだことは、ないかな」


部下 :
「超うらやましいです。このまま一生彼女ができないんじゃないかと悩んで
ます」


マネジャー :
「君は何歳だっけ?」


部下 :
「24です」


マネジャー :
「【24歳だよね?】」


部下 :
「はい」


マネジャー :
「サッカーやテニス、スノーボード、ゴルフ……学生時代からなんでもやる。
スポーツ万能。帰国子女で英語とフランス語がペラペラ。国立大学も出て頭
脳明晰。ファッション雑誌の読者モデルになったこともあるイケメンだ」


部下 :
「イケメンかどうかは知りませんが、大学時代に芸能プロダクションにお世
話になっていたことはあります」


マネジャー :
「それでも彼女ができないんだよね?」


部下 :
「ここ2年以上、いません。口下手だからでしょうか? コミュニケーショ
ン能力を上げようと思い、営業を希望したのですが、営業でもこの2年、ま
ったく成績が上がりません」


マネジャー :
「【そうだよね。コミュニケーション能力に問題があるよね?】」


部下 :
「えっ! やっぱりそうですか?」


マネジャー :
「そうそう。そうなんだよね」


部下 :
「『話し方教室』とか通ったほうがいいんでしょうか」


マネジャー :
「【『話し方教室』とか通ったほうがいいと思ったんだね?】というより、
その態度をあらためたほうがいいよ」


部下 :
「えっ、態度?」


マネジャー :
「焦り過ぎだよ」


部下 :
「焦り……」


マネジャー :
「営業も恋愛も『予材管理』をしたらどうかな」


部下 :
「予材管理……」


マネジャー :
「彼女の予材はどれぐらいあるんだ?」


部下 :
「彼女の予材って……」


マネジャー :
「俺は常に5人ぐらいの予材を持ってた。狙っている、というんじゃなく、
仲が良くて、いつでも会える女性が、ってこと」


部下 :
「彼女の予材って聞くと、めちゃくちゃ不謹慎に聞こえますね」


マネジャー :
「そうだね。言葉の使い方に気をつけないといけないけど、営業と同じで、
短期的な結果を求めすぎると余裕がなくなる。余裕がなくなるからこそ焦り
が出て、その態度が伝わっちゃうんだよな」


部下 :
「うーん。短期的な……」


マネジャー :
「君を見ていると、誰でもいいから彼女になってくれっていう空気を感じる。
それって相手に見透かされるんだと思う」


部下 :
「……そうかも、しれません。正直、今は誰でもいいです」


マネジャー :
「営業も、何か月も何年もかけて『予材資産』を積み上げておけば、その資
産が余裕をもたらしてくれる。その余裕がお客様とコミュニケーションして
いるときににじみ出ていくんだよ」


部下 :
「だから売れる営業は売れるし、売れない営業は売れないんですね」


マネジャー :
「そう。【売れる営業は売れるし、売れない営業は売れないんだよな】。モ
テる奴はモテるし、モテない奴はモテない……」


部下 :
「彼女の予材かァ……」


マネジャー :
「手当たり次第に声をかけろってことじゃないぞ」


部下 :
「さすがに、それぐらいわかりますよ。でも、確かに焦っているせいか、誰
も僕に寄りつかないんですよね。女子の友達も少ないです。反省です」



……余裕がないと自信を失い、自信のなさが相手に伝わり、結果的にコミュニ
ケーション能力が落ちていきます。

営業もそうですね。

結果が出なくて焦っていると、営業の提案内容ではなく、営業自身が放つ「非
言語データ」にお客様は感化されてしまいますから、

余裕を作るには「資産」が必要です。それは「金融資産」「関係資産」「自分
資産」の3つ。

目先の結果が出ていなくとも、この3つの資産があることで余裕が生まれ、焦
らずに済み、自然と自信がわき出てきて、人間関係を良好にするコミュニケー
ションができるようになると私は思います。


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【編集後記】

先日、みずほ総研主催の講演がありました。

場所は日比谷公会堂。250名以上の方がいらっしゃいました。3月にも同じ
場所で講演があり、今回が追加講演。ほぼ同規模の集客がありました。

前回と今回との違いは、講演後の「名刺交換」した人の数です。

前回は、200名以上の方が来場したというのに、5~6名としか名刺交換が
できませんでした。

ところが、

今回は「83名」の方々と名刺交換が実現しました。これは過去最高記録です。
(これまでの記録は日経BP社主催の講演時で「76名」。講演会場の外にま
で名刺交換のための行列ができた)

講演のタイトル、内容もほぼ同じ。

にもかかわらず、これだけ名刺交換に来られた方が激増した理由はいろいろあ
りますが、そのひとつに裏方の人の努力がありました。

実はこの講演チラシには「途中入退室禁止」と書かれており、みずほ総研の事
務局の方が講演会場の扉に張り付き、「遅れて会場へやってきた人」に事情を
説明し、会場に入れないようにされたようです。

名刺交換に20分以上費やし、控室に退いてから、先方の部長にその話を聞き
ました。

私は驚き、「そんなことして大丈夫だったんですか?」と尋ねると、「途中入
室は禁止と事前に伝えてありますし、私が丁寧に謝って事情を説明しました」
と言うではありませんか。

時間に間に合わず会場へ来た人は10人程度いて、その中には怒って帰ってい
た方もいるそうです。しかし部長さんが「私がフォローしておきますから、横
山さんは心配されなくても大丈夫です」と言います。

みずほ総研の部長といったら、それなりの地位の方です。

その部長が会場の扉に立ち、時間に間に合わなかった人ひとりひとりに頭を下
げ会場入りさせなかった事実を知り、私はプロ意識を感じました。

確かに、前回の講演とまったく違ったのは会場の中の雰囲気です。「場の空
気」です。

大ホールに途中で入室した人はゼロ。途中退室した人もゼロです。

張りつめた空気の中で講演できた私は、その空気に感化されて、いつも以上に
アグレッシブに場を作ることができたと思います。

講演後、鳴り止まない拍手の中、檀上から降りて「絶対達成名刺」を取り出す
と、席を立ちあがって名刺交換に集まる方々が列を作り、その列は2つに分か
れ、いっぽうは東の扉へ、いっぽうは北の非常口へと続きました。

その後、講演のときより、名刺交換のときに「ありがとうございました」と連
呼したせいか、声が枯れてしまいました。

やはり「場の空気」というものは、多くの人の手によって作られるものですね。
そしてそれが大きな力となって、多くの人の心にインパクトを与えるのだと思
います。

いつの時も、裏方の人たちに感謝・感謝です。