2014年9月16日

お客様が言う「予算」をどうとらえるか?【アンカリング効果】

● 今回のテクニック:【アンカリング効果(12)】

アンカリング効果とは、最初に示された情報が頭に残り、その後の判断に影響
を与えることを言う。

このアンカリング効果を利用し、相手の発言を誘導させるテクニックを使う。
逆に影響を与えさせないようにするためには、他者の意見に左右されないよう、
いっせいに紙に書かせるなどのテクニックが有効だ。

※ 確実にアンカーを落とすためには、冒頭に有無を言わせないような態度と
裏づけのある事実をもって説明するとさらに効果的である。


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● 今回のコミュニケーション例


マネジャー :
「来期の管理者研修にかける予算を600万円としたい。12人いる管理者
1人あたり【50万円】と計算したんだ」


部下 :
「はァ……」


マネジャー :
「1人100万円は多いが、1人10万円だと、とても少ない。だから【5
0万円】とした。だいたい『人が大事だ』と言いながら、人に対して投資し
ないなんてあり得ないだろう」


部下 :
「確かに、年間10万円では少ないでしょうね。1~2回外部セミナーへ参
加したら終わりですから」


マネジャー :
「そう。ただ、これはあくまでも私の意見だ。君は、研修予算について、ど
う思う?」


部下 :
「そうですね……。私も、1人あたり【50万円】ぐらいが妥当だと思いま
す。1人100万円は多い気がしますし、それぐらいかと……」


マネジャー :
「なるほど」


部下 :
「はい」


マネジャー :
「とはいえ、来期の研修予算は1000万円かける」


部下 :
「えっ?」


マネジャー :
「管理者研修として必要と思われる予算だから、1000万円とした」


部下 :
「え……でも、先ほど、1人あたり【50万円】と言ってたじゃないです
か」


マネジャー :
「それはひとつの目安だ」


部下 :
「……?」


マネジャー :
「あらかじめ『予算』として確保しておく金額と、戦略に必要な『経費』と
は異なる。必要あれば使うし、必要なければ使わない」


部下 :
「まァ、確かに。言われてみれば、そうですね」


マネジャー :
「君にお子さんがいただろう?」


部下 :
「はい。今年で10歳になる男の子です」


マネジャー :
「もしお子さんが病気になり、手術が必要になったら、多少お金がかかって
も手術してもらうだろう?」


部下 :
「親として当然です」


マネジャー :
「そう。会社だってそうだ。財務を健全化させるために必要な経費であれば、
当然支払う。『予算』なんて、しょせん『アンカリング効果』だ。その数字
にそれほど意味があるわけでもない」


部下 :
「まァ、そうかもしれませんね……。先ほども部長が、管理者1人【50万
円】だ、というので私もそう思い込んだのですが、そこに論拠はないですも
のね」


マネジャー :
「そうそう。そんなもんだ。ところで、K社の案件はどうなってる? 進ん
でいるのか」


部下 :
「K社の案件ですか。こちらの見積りと、先方の予算が合わないんですよ。
K社の担当者が500万円以内じゃないとダメと言うんですが、当社の提案
が760万円でして……。何とか500万円以内におさめなければなりませ
ん」


マネジャー :
「だーかーらー、本当に相手が必要だと思ってくれたら、予算なんて関係な
いんだよ」


部下 :
「そうは言われても、相手はガンとして譲らないのです。『これは予算だか
ら』『これは予算だから』と言って」


マネジャー :
「K社の誰が、予算を決定しているんだ」


部下 :
「……それは、まだ、特定していません」


マネジャー :
「君の言うとおり相手の予算に引きずられて、こちらの提案がうまくいかな
いケースもあるだろう。しかし、それはあくまでも『アンカリング効果』の
仕業だと思い、簡単に引き下がるな」


部下 :
「耳が痛いです。お客様に『予算内で』と言われたら、すぐそれに応じない
といけないと思ってしまいます」


マネジャー :
「君がもし医者だったら、病気が治るベストの提案をしないか? 患者の予
算内におさめようと工夫するのか?」


部下 :
「……」


マネジャー :
「本当にお客様のためを考えて提案する習慣を身につけたまえ。相手の予算
に合わせるのは、それからだ」



……私たちコンサルタントは特にそうですね。

お客様の「予算」に合わせて提案するのは、おかしいです。

「業績が悪化しているから何とかして欲しい」と本気で相談されるお客様から、
「予算はこれだけしかないんですけれどね」などと言われることはありません。

万が一そう言われるのなら、本気でないだけです。

たとえ内部資金が枯渇していても、当社の財務会計のコンサルタントに相談す
れば、解決する手段があるかもしれません。

お客様の「予算」に惑わされて営業活動をしていると、ベストな提案をする習
慣が身につかないですね。

そのこと自体が、一番お客様に失礼だと私は思います。

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【編集後記】

9月14日(日)に、24年以上つづけている知的障がい者のボランティア活
動がありました。

名古屋のボランティアサークル、5団体による「合同運動会」が開催され、参
加してきました。

私自身がイベント担当でしたので、朝からスポーツセンター内で走り回ってい
ました。

残念ながら我がチームは3位に終わったのですが、

優勝したチームは、30年近く続いているこの「合同運動会」において、はじ
めての優勝だったようで、

もう、爆竹がはぜたように、障がいを持っている人も、ボランティアたちも大
喜びをしており、

見ていた私も感動してしまいました。

ひと目を気にせず飛び上がったり、抱き合ったり、体全身を使って喜びを表現
することって、なかなかないですよね。

そんな、滅多に目にできないシーンに居合わせることができて、とても良い体
験となりました。