2014年12月11日

「幻の羊羹」をどのように売るか?【ピア・プレッシャー】

● 今回のテクニック:【ピア・プレッシャー(12)】

ピア・プレッシャーとは、人間は通常、同じ組織内の仲間に認められたい、疎
外感を味わいたくないと考え、仲間のあいだで自分がどのように見られている
かを気にする傾向がある。

そのせいで、仲間や社会と同じ考えでなければならないという圧力(プレッシ
ャー)を常日頃から感じているものだ。

これをピア・プレッシャーと言う。

特に「和」を尊ぶ日本人に対しては、このピア・プレッシャーは強力と言えよ
う。


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● 今回のコミュニケーション例


営業マンA :
「部長、羊羹を買ってきました。ひとついかがですか?」


マネージャー :
「ありがとう。羊羹か……。久しぶりだな」


営業マンA :
「羊羹、あんまり食べないですか?」


マネージャー :
「そうだなァ。3切れもあるけど、そんなに食べられるかな。ところで君は2
5歳だっけ……? 羊羹なんて食べるのか」


営業マンA :
「ええ。この羊羹なら、食べます。どう、美味しいですか?」


マネージャー :
「うん……」


営業マンB :
「A君、小ざさの羊羹、食べたよ。さい、こ、う……だっ……た……」


営業マンA :
「やっぱり最高の味でしたか」


営業マンB :
「こんな羊羹、た、べ、た、ことが、ない……」


マネージャー :
「……?」


営業マンA :
「『幻の羊羹』って言われるだけあるでしょう?」


営業マンB :
「さすがに40年以上も行列が途切れないお店が作っているだけあるな。これ
まで想像していた『羊羹』とは、根本的に違う何かを感じたよ」


営業マンA :
「さすがBさん、わかってくれますか」


マネージャー :
「おざさ……?」


営業マンA :
「吉祥寺にある、たった一坪のお店で羊羹ともなかを売っているお店です。
『小ざさ』って言うんですよ。『日本でいちばん大切にしたい会社』の著者で
ある坂本先生も紹介して、話題になりました」


営業マンB :
「テレビでも取り上げられてるよね」


マネージャー :
「日本でいちばん大切にしたい会社、か……」


営業マンC :
「A君、『小ざさ』の羊羹、ありがとう。めっちゃくちゃ美味しかった! や
はり美味しいな」


営業マンA :
「Cさんも羊羹がお好きなんですか?」


営業マンC :
「いや、普通は食べないけど、この羊羹なら食べられる。というか、行列に並
んでも食べたいと思うよ」


マネージャー :
「今朝、何時から行列に並んだんだ?」


営業マンA :
「えーっと、4時半です」


マネージャー :
「……はァ?」


営業マンB :
「4時半か、やっぱり、それぐらい早くないと1番はとれないのか?」


営業マンA :
「いえいえ。4時半でも、5番目でしたよ」


マネージャー :
「えええ」


営業マンC :
「4時半で5番目……?」


営業マンA :
「1番前に並んでいた人は、三重から来たって言ってました。3時まで飲んで、
タクシーでやってきたと」


マネージャー :
「……」


営業マンB :
「やっぱり始発電車に頼ってたんじゃ、行列に並べないよな」


営業マンA :
「6時過ぎたときには、もう50人は並んでいましたよ」


マネージャー :
「朝の4時半から並び、6時過ぎになってようやく羊羹が買えるのか?」


営業マンA :
「いえ、10時です。ですから今日、午前年休をとったんです」


マネージャー :
「ええっ! 10時……」


営業マンB :
「すげー根性」


営業マンA :
「今日のために、先週末、出勤して仕事をしてましたから」


マネージャー :
「そこまで、この羊羹に……」


営業マンA :
「季節によって、温度や湿度だけでなく、炭の具合や、小豆の状態の微妙な変
化で味が変わるらしいんです。火加減やら、小豆の洗い方とか」


マネージャー :
「炭の具合、火加減、小豆の洗い方……?」


営業マンA :
「店主の稲垣さんは、羊羹を練り続け、究極の羊羹を作り上げたそうなんです。
書籍『一坪の奇跡』に書いてありました」


マネジャー :
「究極の羊羹……」


営業マンA :
「本の受け売りですが、『小ざさ』の羊羹は、ポクポクの芋羊羹、ネチネチの
普通の羊羹、プリプリの錦玉かん、口のなかでスーッと溶ける水羊羹の、四つ
の種類の羊羹の、ちょうど交点にある羊羹なんだそうです」


マネジャー :
「4つの種類の交点……」


営業マンB :
「俺も本を読んだよ。『対角線の中心を探せ』とお父さんに教え込まれたっ
て」


マネジャー :
「『対角線の中心』って……」


営業マンA :
「この羊羹は1人3本まで。店舗でしか買えません。それを買ってきました。
ぜひ、味わって食べてください。部長」


マネージャー :
「な、なんでそんなスゴイ羊羹を、俺に? しかも3切れも?」


営業マンA :
「いつもお世話になっているから、です」


マネージャー :
「……」


営業マンA :
「部長に喜んでもらいたいんです。絶対に美味しいって、言ってくれるはずで
す。たかが羊羹なんですが、ものすごく手間暇かけて作られた味に衝撃を受け
るはずです」


営業マンB :
「部長、せっかくですから、食べてください」


営業マンA :
「現代に生きる私たちが忘れかけた何かを、この羊羹は思い出させてくれるん
です。私たち日本人が忘れちゃいけない、何かが、この羊羹には詰まっている
んです。だからどんなに寒い朝でも行列が途切れないんです」


営業マンC :
「部長、まずは1切れ、食べてください」


マネージャー :
「……うん。そこまで、言うなら……」


営業マンA :
「どうですか?」


営業マンB :
「どうですか?」


営業マンC :
「どうですか?」


マネージャー :
「うん。うまい……。確かに、うまい」


営業マンA :
「やっぱりそうですかっ! 美味しいですか」


マネージャー :
「うん……。社交辞令でなくて、本当に美味しい。ま、そうでなきゃ、40年
以上も早朝から行列が途切れない、なんてあり得ないものな」


営業マンC :
「そうですよねェ。確かに。いやァ、やっぱりそうでしたか」


マネージャー :
「それにしても、だ」


営業マンA :
「はい?」


マネージャー :
「君の、この羊羹に対する愛情はどうだ? そしてウンチクも凄かった。同じ
ような熱情を、当社の商品にも注いでくれないか」


営業マンA :
「え……」


マネージャー :
「この羊羹を私に勧めるぐらいに当社の商品をお客様に紹介できたら、君の営
業成績はかなりアップすると思うよ」


営業マンA :
「それは、その……」



……新刊「空気でお客様を動かす」に書いたノウハウを、ふんだんに使ってメ
ルマガを書いてみました。

「社会的証明の原理」「限定の原理」「世間の空気」「集団の空気」「個人の
空気」「第一の知識」「第二の知識」「ミクロ情報」「マクロ情報」「ティー
チング」「マイフレンドジョン」「プリフレーム」「好意の返報性」「サンク
コスト効果」……など等。

おかげさまで「空気でお客様を動かす」は発売2日で【重版】がかかりました。
ありがとうございます!

お客様に「せっかくだから」「そこまで言うなら」と言ってもらえる「空気」
を作るテクニックを覚えてください。ぜひ!


■「空気でお客様を動かす」
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 【61点】……本日のメルマガ本文に対する横山の「お気に入り度」
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【編集後記】

自分自身にもそうだし、他人を見つめるときにも、

たまに、

「この人は今、ベストを尽くしているだろうか?」

と思うときがあります。

「ベストを尽くしているか」

は、『キング・オブ・ザ・精神論』という感じで、どう解釈していいのかわか
りづらいですが、

何となくの感覚でもいいのです。

いつも「ベストを尽くしている」必要はないでしょうが、不平や不満、愚痴や
ジレンマを覚えたとき、

自分は今、「ベストを尽くしているか」

と、問いかけたくなります。

「他人はベストを尽くしていないのに、自分だけがどうしてベストを尽くさな
くちゃいけないんだ」

という思考ノイズが頭をよぎったら、紛れもなくベストを尽くしていない証拠
です。そういうときは反省します。

また、「スマートにベストを尽くすことは不可能」とも思っています。

ベストを尽くそうとするとカッコ悪くなって当たり前です。なので、

カッコつけようと思った瞬間に、自分の限界の手前で足を止めたのだと私は判
断するようにしています。