2014年12月22日

「ワーキングメモリ営業」を最大限に活用する【ドア・イン・ザ・フェイス】

● 今回のテクニック:【ドア・イン・ザ・フェイス・テクニック(16)】

ドア・イン・ザ・フェイス・テクニックとは、はじめに本当に頼みたい事柄よ
りもかなり負担の大きな依頼をし、一度断られてから本当に頼みたいことを伝
えるテクニック。

最初に提示した情報が頭に残り、その後の判断に影響を与えるアンカリング効
果の一部と考えてもよい。

依頼者が一端譲歩すると、ついつい相手も譲歩してしまうことを「譲歩の返報
性」と言うが、これを利用ししている。

※ 「フット・イン・ザ・ドアテクニック」の反意語。


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● 今回のコミュニケーション例


マネジャー :
「この年末にオフィスの中にいる営業って、いったいどうなっているんだ。
私には到底、理解できない」


部下 :
「部長、それは仕方がないですよ。当社は工場の設備を売っている会社なの
です。部長が去年までいた保険会社とは違いますから」


マネジャー :
「保険会社と違う、だって? 君は保険会社の営業をやったことがあるの
か」


部下 :
「い、いや……やったことはないですけど」


マネジャー :
「知らないからこそ、平然と『やらない理由』に利用できるんだ」


部下 :
「あ、いや……」


マネジャー :
「この前だって、『当社は値上げするのは難しい。吉野家と違うんだから』
と言っていたが、吉野家のような飲食事業の経営に携わったことがあるの
か?」


部下 :
「それは、ありませんが……」


マネジャー :
「詳しく知らないくせに『うちは●●と違いますから』と言うなよ。恥ずか
しい。『厚顔無恥』とは、まさに君のためにあるような言葉だ」


部下 :
「そんな……。今日はやけに突っかかりますね、部長」


マネジャー :
「さっきも言ったように、年末なのにオフィスにいる営業が多いからだ。ど
うなってるんだ」


部下 :
「掃除とか、デスク周りの整理整頓をしてるんだと思いますが……」


マネジャー :
「そうだよ! まさにその通りだ! お客様も、それをやってるよ。だから
絶好のチャンスなんじゃないか。今、行けば、ほぼ確実に会えるだろう!」


部下 :
「し、しかし、この年末にお客様とお会いしても、商談などできませんし、
意味のある訪問なんてできないと思いますが」


マネジャー :
「違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違
う違う違う違う違う違う違う違う違う違う!」


部下 :
「え、え、え、え、え……」


マネジャー :
「なぜ商談をしなくちゃいけないんだ。以前も言っただろう? 『単純接触
効果』を狙えって」


部下 :
「単純接触って……」


マネジャー :
「君はいまだにピンと来てないんだろう? 『2ミニッツ営業』のことを」


部下 :
「ええ、まァ……実際は……」


マネジャー :
「君は先日、印刷会社の営業とロビーで話をしていたな?」


部下 :
「はい」


マネジャー :
「あの人の名前はなんだ?」


部下 :
「ああ、あの人は橋本さんです」


マネジャー :
「じゃあ、いつもオフィス文具を配達しに来る男性がいるだろう。朝10時
に」


部下 :
「ええ、いますいます。なんでしたっけ? ものすごく大きな声で挨拶する、
あの男性ですよね」


マネジャー :
「そう」


部下 :
「何でしたっけ……」


マネジャー :
「長谷川さんだよ」


部下 :
「ああ、そうか! 長谷川さんでしたね!」


マネジャー :
「どうして橋本さんの名前は憶えていて、長谷川さんの名前は思い出せなか
った?」


部下 :
「ええええ」


マネジャー :
「ちなみに橋本さんはどんな仕事をしているか知ってるか?」


部下 :
「知ってますよ。印刷会社の営業です。あの人、印刷物だけでなく、WEB
製作にも詳しいので、今度、当社のホームページを無償で分析してもらうこ
とになったんです」


マネジャー :
「長谷川さんの仕事は?」


部下 :
「長谷川さんの仕事は……文具の、配達……?」


マネジャー :
「長谷川さんは経理の人だよ」


部下 :
「あ……!」


マネジャー :
「思い出したか? 今年の夏に一度、私と一緒に君と長谷川さんとで立ち話
をしたじゃないか。オフィス用品を扱っている商社に勤めているが、人が辞
めていって配達する人もいないので経理の自分が兼任しているって」


部下 :
「そういえば、そうでした」


マネジャー :
「なぜ、思い出せない?」


部下 :
「えっ……。なぜ、って」


マネジャー :
「私から言われたら思い出せるが、言われなければ思い出せない。なぜだか、
わかるか?」


部下 :
「……」


マネジャー :
「脳の長期記憶の中に入っているか、それとも短期記憶の中に入っているの
か、の違いだ」


部下 :
「長期と、短期記憶……」


マネジャー :
「短期記憶はワーキングメモリとも言う。パソコンでも言うだろう」


部下 :
「はい。『作業記憶』のことですよね」


マネジャー :
「効率的に作業するため、しょっちゅう使う情報は脳の短期記憶、つまり
ワーキングメモリに入れておくんだ。しかし、頻度が多くないと、長期記憶
の中に格納される」


部下 :
「そうか――!」


マネジャー :
「全営業を呼べ。そしてカレンダーを持たせろ。お客様の脳のワーキングメ
モリに自分の顔と名前を常駐させるんだ。保険業界だからとか建設業界だか
らとか、まったく関係がない」


部下 :
「お客様の脳のワーキングメモリに常駐するから、何かがあったときに選ん
でくれるんですね」


マネジャー :
「要するに『脳内SEO』対策というわけだ。要件がないのにもかかわらず
顔を見せるのは、お客様の脳の検索エンジンに引っかかりやすくするためだ
よ」


部下 :
「なるほど。しょっちゅう見てもらえるカレンダーを渡せば、お客様の脳の
ワーキングメモリに我々は常駐できますね」


マネジャー :
「すべての営業に、今週ですべてのお客様のところへ回れ。1日50社まわ
れば大丈夫だろう」


部下 :
「1日50社って……! ですから、うちは保険会社じゃないんですよ」


マネジャー :
「何?」


部下 :
「いやいやいや。とにかく1日50社は無理ですが、すべての営業にカレン
ダーを持たせ、まわらせます。お客様のそれぞれの工場までの移動距離もあ
りますから、1日20社で勘弁してください」



……脳の長期記憶の中に入っていると「言われればわかる」。

短期記憶の中に入っていると「言われなくてもわかる」という状態です。

お客様が、当社の誰が営業で、その営業が何を売りたいと考えていて、それが
どんなメリットをもたらすのか……「言われなくてもわかる」という状態にな
ってはじめて仕事が来るのです。

「単純接触効果」を理解するうえで、脳の「ワーキングメモリ」の知識は不可
欠です。

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 【53点】……本日のメルマガ本文に対する横山の「お気に入り度」
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【編集後記】

24日の号外メルマガで、今年私が読んだ中で、最も参考になった書籍を紹介
します。

冬休みの読書のための、ご参考にしてください。