2014年12月4日

「人間として」絶対に、忘れてはならないもの【好意の返報性】

● 今回のテクニック:【好意の返報性(13)】

好意の返報性とは、人は好意を受けられると、それを返したくなるという習性
のことで、ミラーリング効果ともいう。

相手とコミュニケーションをする際も、好意をもって接するのと、そうでない
のとでは相手の反応も異なる。特に信頼関係(ラポール)が崩れてきたときに
は、「きっと……に違いない」と思い込み、決め付けたような悪意ある物言い
をしてしまうものである。

ニューロロジカルレベルの概念を意識し、どんな相手であろうと、その「アイ
デンティティ」や「価値観」には好意を持ち(承認し)、相手のとった「行
動」にこそフィードバックしたいものだ。


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● 今回のコミュニケーション例


マネジャー :
「配送担当のKさんの話を聞いたか」


部下 :
「はい。聞きました」


マネジャー :
「そうか」


部下 :
「……」


マネジャー :
「……」


部下 :
「Kさん、10歳のときにお父さんを亡くされた、と聞きました」


マネジャー :
「うん」


部下 :
「そのショックでお母さんが聴覚を失い、親族の支援を受けながらも、中学
を出たけれど、その後は高校にも行かなかった」


マネジャー :
「正確には、半年ぐらいは通った、と聞いた」


部下 :
「はい。でも、執拗なイジメを受けて、中退したって言っていました」


マネジャー :
「うん」


部下 :
「Kさん、当時は16歳の女の子、ですよね。行くところは……そこしかな
かったんでしょうか。悪い奴と一緒につるんで体を売り、耳の不自由なお母
さんのところには滅多に戻らなかったとか」


マネジャー :
「Kさん、あっけらかんと、そのことを言うだろ?」


部下 :
「そうですね……。30年以上も前のことだからでしょうか。でも、当時は
どんな心境だったか」


マネジャー :
「中等少年院を出てからだろ、凄まじい人生が始まるのは」


部下 :
「そうです。そこまでも大変なのに、そこからは、もっと大変……」


マネジャー :
「17歳で50歳の不動産会社の社長と結婚し、19歳で風俗店3店舗の経
営に乗り出す。20歳で違法サービスや暴力事件の関与などを疑われて逮捕
され、2年間……いわゆる『クサイ飯』を食ってる」


部下 :
「Kさん、刑務所のご飯は意外とクサくはない、なんて言ってました」


マネジャー :
「Kさん、らしいな」


部下 :
「出所し、24歳で再婚したチンピラから暴行を受けるようになり、左耳が
聞こえなくなって、それから精神の病を患い、覚せい剤、そして再び売春…
…」


マネジャー :
「……」


部下 :
「薬物依存更生施設に入ったのは、29歳から、でしたっけ」


マネジャー :
「28歳だ」


部下 :
「28歳、ですか……。今の私と、同じ歳です」


マネジャー :
「施設にいる間に、左耳の聴覚もほぼ失った。31歳のときに更生施設を出、
聴覚障がい者向けのサークルに入り、手話を習った」


部下 :
「そのときの手話の、先生が」


マネジャー :
「そうだ」


部下 :
「Kさんの、お母さんだった――」


マネジャー :
「……」


部下 :
「ど、どんな、気持ちだったんでしょうね」


マネジャー :
「Kさんが、か?」


部下 :
「いや、私は、Kさんのお母さんの気持ちを、まず、考えました」


マネジャー :
「……」


部下 :
「まさに、変わり果てた……娘の姿を、目の当たりにしたわけでしょう?」


マネジャー :
「……」


部下 :
「Kさんは細々と働き、生計を立て、お母さんと暮らしはじめ、2人で手話
サークルを徐々に大きくしていった」


マネジャー :
「そうだ。今は、その手話サークルの会員が、全国に7000人いる」


部下 :
「……」


マネジャー :
「お母さんと再会し、その後10年で、日本全国28ヶ所に支部がある手話
サークルを創り上げた。これまでにテレビや雑誌で取材された回数は100
回を超える」


部下 :
「はい……」


マネジャー :
「そのKさんが、わが社にいる」


部下 :
「はい」


マネジャー :
「Kさんがしている仕事は、工場で作ったお菓子を段ボールに詰めて配送す
る仕事だ。Kさんの給料は知っているか?」


部下 :
「はい。……時給790円です」


マネジャー :
「その時給は、この5年、1度も上がっていない」


部下 :
「……」


マネジャー :
「Kさんは当社に入社して8年、ただの1度も休んでいない。全国に支部が
あるサークルの副代表をしながら、だ」


部下 :
「も、申し訳ありません!」


マネジャー :
「君は、どうして先週、3日間、休んだ?」


部下 :
「僕は、僕は……Kさんの何倍も、給料をもらってるっていうのに……」


マネジャー :
「Kさんは笑いながら、過去の話をしてくれただろう?」


部下 :
「あああ」


マネジャー :
「……」


部下 :
「ぼ、僕は、営業活動をするのが嫌になって、ずる休みをしました。新規の
お客様訪問をするのがイヤで、だから3日間休んだんです。本当にごめんな
さい……。お腹が痛いと言ったのは、嘘です……!」


マネジャー :
「……」


部下 :
「……」


マネジャー :
「私はKさん他、障がいを持つ人たちを多数、雇用している当社の社長を、
私は心の底から尊敬している。人間として、絶対に忘れてはならないものを、
社長は持っているからだ」


部下 :
「……はい」


マネジャー :
「うちの会社を、好きになってくれ」


部下 :
「はい……」


マネジャー :
「黙々と、工場で作られたお菓子を段ボールに詰めている人たちの、それぞ
れの人生を考えて、うちの会社を好きになってくれないか」


部下 :
「はい……!」


マネジャー :
「うちの商品を好きになれなくてもいい。興味を持てなくてもいい。でも、
この会社のことは好きになってくれ」


部下 :
「……」


マネジャー :
「その気持ちは……絶対に、絶対に、お客様に、伝わるから」


部下 :
「はい」


マネジャー :
「その気持ちは……絶対に、伝わるから」


部下 :
「はい」


マネジャー :
「新規のお客様訪問で、ツラくなりそうになったら、Kさんはじめ、社員の
顔を思い出してくれ」


部下 :
「僕は……」


マネジャー :
「……」


部下 :
「僕は、ずっと、ずっと……。『売らなければならない』という気持ちで、
営業してきました。ずっと『売らなければならない』という気持ちを持ち続
けてきました。だから、ツラかったんだと思います」


マネジャー :
「うん……」


部下 :
「でも、今日からは、違います」


マネジャー :
「そうか……」


部下 :
「『売りたい』です。『売りたい』、に変わりました。当社と取引してくれ
る会社と、心底出会いたいです。わが社が好きだから……」


マネジャー :
「うん」


部下 :
「うちの会社が好きだから……!」



…… 何事も「逆算思考」です。「楽しいから笑える」という現象も、「笑っ
ていると、楽しくなる」という現象も表裏一体。

「好きだから、もっと知りたいと思う」という現象も、「仔細に調べていくこ
とで、好きになっていく」という現象も同じです。

人の人生、商品開発、製造工程……すべてにおいて「ストーリー」があります。

そして「ストーリー」は必ず【葛藤】と【衝突】とで形成されているものです。

どのようにして、会社を好きになるのか? 商品を好きになるのか? お客様
を好きになるのか?

そして、どのように人間が、「売れる空気」を作っていくのか?

いよいよ全国で新刊が販売スタートします!


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【編集後記】

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原稿を書きました。

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私はこの書籍が好きで、編集・販売に関わってくださったすべての人が好きで、
そしてすべての読者が大好きです。

出版社に感謝と敬意を表するために、著者が売らなくて誰が売る!

行くときは、行く!

ぜひ、新刊を、どうぞよろしくお願いいたしますっ!