2015年4月2日

お客様と「ラポール」を築くちょっとしたコツ【カリギュラ効果】

● 今回のテクニック:【カリギュラ効果(10)】

カリギュラ効果とは、禁止されるとますますその行為をやってみたくなる心理
作用のこと。

「それを見てはいけません」「絶対にその箱を開いてはいけません」「男性は
出入り禁止」「15歳未満の方は鑑賞できません」

「禁令」が出るほど、その世界に足を踏み入れたくなるもの。その心理状態の
ことを「カリギュラ効果」と呼ぶ。


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● 今回のコミュニケーション例


部下 :
「もう、お手上げです」


マネジャー :
「どうした?」


部下 :
「商談相手であるA社の部長の言葉が、ワケわかりません」


マネジャー :
「何の話だ?」


部下 :
「商談の最後に部長が言ったんです」


マネジャー :
「なんて?」


部下 :
「"バラのつぼみ"です」


マネジャー :
「バラのつぼみ!」


部下 :
「そうです。当社が提案しているのは、A社のシステム案件です。私どもの
提案内容が、まだ"つぼみ"のようなものだ、と言われているのかと」


マネジャー :
「……つぼみ?」


部下 :
「そうです。今の提案内容では、バラのような花は咲かない、という意味か
と思いまして」


マネジャー :
「それで?」


部下 :
「それで、A社の部長に聞いてみたのです。そうしたら『まったく違う』と
言われてしまいました」


マネジャー :
「……」


部下 :
「次に私はバラの花言葉を調べました。しかしバラの花言葉は色によって変
わります。赤であれば『情熱』とか『美貌』。白なら『尊敬』『純潔』。ピ
ンクなら……と」


マネジャー :
「ほう」


部下 :
「バラの色は10種類以上あります。その色それぞれに花言葉があるのです。
ですから私はA社の部長に聞いたんです」


マネジャー :
「何を?」


部下 :
「色です。部長がおっしゃる"バラのつぼみ"のバラは何色ですか、って」


マネジャー :
「君はおめでたいな……」


部下 :
「そうしたら、『色など関係がない』と言われました」


マネジャー :
「……あ、た、り、ま、え、だ……」


部下 :
「他にも、A社のいろいろな方に聞きまわったのですが、誰も部長が商談の
最後に言い残した"バラのつぼみ"の意味がわからない、と言うのです」


マネジャー :
「……」


部下 :
「どうしたらいいかまったくわかりません。その謎を解かない限り、商談を
前に進めることは禁止だと言われて」


マネジャー :
「もういい」


部下 :
「え」


マネジャー :
「もういいよ」


部下 :
「どうしたんですか、課長」


マネジャー :
「君が言う、その大いなる悩みを、いつから引きずっているんだ?」


部下 :
「ええっと……。かれこれ2週間ほどです」


マネジャー :
「滑稽だ」


部下 :
「え!」


マネジャー :
「その部長の名前を言ってみろ」


部下 :
「ええっと清水部長です」


マネジャー :
「フルネームは?」


部下 :
「清水健さんです」


マネジャー :
「なるほど、やはり」


部下 :
「やはり?」


マネジャー :
「私はさっき聞いて、すぐに"バラのつぼみ"の意味がわかった」


部下 :
「ええええっ! すぐに?」


マネジャー :
「このメルマガを読んでいる多くの人も、すぐにわかったはずだ」


部下 :
「ええええーー」


マネジャー :
「おそらく清水部長は映画ファンだ。違うか?」


部下 :
「どうしてわかったんですか?」


マネジャー :
「わかるよ。好みは何だ?」


部下 :
「映画なら何でも鑑賞されるそうですが、やはり名作がお好きだとおっしゃ
っていました」


マネジャー :
「だろうな」


部下 :
「とにかく映画好きですよ」


マネジャー :
「世界で最も評論家から評価されている不朽の名作って、何かわかるか?」


部下 :
「え? 映画で、ですか」


マネジャー :
「そう」


部下 :
「ええええ。わかりません。……『ライオンキング』ですか?」


マネジャー :
「はァ?」


部下 :
「『ライオンキング』、いいじゃないですか。私は好きです」


マネジャー :
「この話の流れで、『ライオンキング』が出てくるか?」


部下 :
「じゃあ、『ダイハード』ですか?」


マネジャー :
「ち、違うよ……。有名な映画だけど、評論家が選ぶオールタイムベストに
は入らない」


部下 :
「全然、映画には詳しくないんです」


マネジャー :
「清水部長に、それを見抜かれたんだよ」


部下 :
「えっ!」


マネジャー :
「君はA社の清水部長に何度も会っている。世間話もするような間柄になっ
た。しかしながら、部長の話に口裏を合わせるだけで、実際には深く共感し
ていない」


部下 :
「どうして、そんなことがわかるんですか」


マネジャー :
「だから"バラのつぼみ"だって」


部下 :
「まったく、意味がわかりません。ミステリー過ぎます」


マネジャー :
「一度でもインターネットで"バラのつぼみ"で検索すれば、答えがわかる
だろう。そして映画史上、最も評論家に史上最高と言われた映画も何かがわ
かる」


部下 :
「……た、確かに、ネットで"バラのつぼみ"を検索したことはありませ
ん」


マネジャー :
「A社の部長は謎かけがお好きのようだが、いろいろなヒントを出してくれ
ていることも事実だ。それを察知できなかったのは、君の感度が低く――」


部下 :
「あああっ! わかりましたっ」


マネジャー :
「どうした」


部下 :
「『市民ケーン』です。そうです、『市民ケーン』ですよ。清水部長は自分
のお名前とよく似ているこの映画をこよなく愛していました」


マネジャー :
「それを観たか、と部長に言われただろう?」


部下 :
「はい、もちろん観ました、とお答えしました。本当はまったく観ていませ
んが」


マネジャー :
「それがバレたってことだよ」


部下 :
「ええっ! "バラのつぼみ"のせいで?」


マネジャー :
「当たり前だ。『市民ケーン』を観た人が"バラのつぼみ"と言われて、意
味がわからないだなんて、あり得ない」


部下 :
「えええええ。そうなんですかァ……」



……お客様と強い信頼関係を築きたいのであれば、お客様がおススメする

「美味しいお店」「参考になるビジネス書」「感動した小説」「興味深い映
画」といったものは、

ひとつやふたつ、味わっておいたほうがいいでしょうね。

お客様と「ラポール」を構築するうえでの、重要な手がかりとなります。

ハードルが低いものに限りますが。


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 【61点】……本日のメルマガ本文に対する横山の「お気に入り度」
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【編集後記】

私は小説が好きで、おススメしたい小説はたくさんあります。

相手の好みにもよりますが、

あえてここで書くなら、梶井基次郎「檸檬」ですね。

掌篇といわれる、とても短い小説ですが、そこに描かれた世界観をどう味わう
かは、読者の感性にゆだねられると思っています。

「市民ケーン」と同様、発表当時は評価されませんでした。

しかし後に日本文学の傑作として多くの評論家、作家に支持されていきます。