● 今回のテクニック:【時間的フレーミング(16)】
時間的フレーミング(テンポラルフレーミング)とは、時間の単位を変えて表
現することにより、敢えて物事の捉え方を変えさせることをいう。
大きな期間で表現するよりも、小さな時間の単位で伝えたほうが、より具体的
で身近に感じられるため説得効果が高まる。
会議の終了間際にコミットメントをとる場合に使うと、非常に有効である。誰
でも簡単に使えるテクニックであり、セルフコーチングにも役立つ。
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● 今回のコミュニケーション例
部下 :
「課長、社内報で紹介されていた本、週末に買って読んだのですが、まった
く参考になりませんでした」
マネジャー :
「あ、そうか。私はまだ読んでないが」
部下 :
「読まないほうがいいですよ。読むだけムダです」
マネジャー :
「読むだけムダか」
部下 :
「最近、全然いいビジネス書がないですね。昔はもっとあったと思います
が」
マネジャー :
「私は月に5冊ほど読んでいるが、参考になる本との出会いはあるぞ」
部下 :
「私の本の選び方に問題があるのかもしれません」
マネジャー :
「そういえば3月末のイベントに参加したお客様へのフォロー電話、どう
だ?」
部下 :
「ああ、少ししかまだやっていません。そもそも3月末にイベントに来るお
客様なんて、暇な人だけですよ」
マネジャー :
「そういう言い方はないだろう」
部下 :
「4、5人に電話はしましたが、反応はよくないです。すぐに仕事になりそ
うなお客様はゼロと言っていいでしょう」
マネジャー :
「すぐに仕事になりそうなお客様なんて、そうそう来ないよ」
部下 :
「それだったらイベントなんてやる意味ないでしょう。イベント開催する費
用をドブに捨てるようなものです」
マネジャー :
「おいおい」
部下 :
「ところで、また週末はあの研修を受けるんですか」
マネジャー :
「そうだ。部下が4人いるグループリーダーなんだから、部下育成とは何か、
しっかり勉強してほしい」
部下 :
「2回も3回も言わないと理解できない部下ばかりですからね。苦労しま
す」
マネジャー :
「部下なんて、そんなものだ」
部下 :
「この研修、何回やるんですか?」
マネジャー :
「年に4回はやる」
部下 :
「そんなに4回も研修やってもムダですよ。1回でなんとかなる研修はない
んですか」
マネジャー :
「君は……。そういう発想で物事を考えていると、疲れないか?」
部下 :
「え」
マネジャー :
「物事を『うまくいく/うまくいかない』の2軸だけで考えていると、疲れ
る人生を送るぞ」
部下 :
「『うまくいく/うまくいかない』の他に、何があるんですか?」
マネジャー :
「たとえば私の課には3つのグループがある。昨年度、課の目標は達成でき
たが、全員が目標達成したわけではない」
部下 :
「そ、それは申し訳ありません。私どものグループが足を引っ張りました」
マネジャー :
「他の2つのグループは、毎日毎日、全員が、まったくムダのない、すべて
意味のある行動をとってきたと思うか?」
部下 :
「いやいや、そんなことは思いません」
マネジャー :
「2年前にグループリーダーになったTさんが、昨年、中小企業診断士を受
けて合格した」
部下 :
「はい。Tさんを尊敬します。同じグループリーダーで、しかも3歳も年下
なのに、結果も出しているし、資格まで……」
マネジャー :
「診断士の合格には、平均1000時間の勉強が必要と言われている」
部下 :
「え……! 1000時間……」
マネジャー :
「しかし、その1000時間、すべて無駄のない勉強だったと思うか?」
部下 :
「いやいや、そんなことはないでしょう。Tさんにとって初めての試験対策
と言っていたので、勉強方法も試行錯誤したと思います」
マネジャー :
「ひとつひとつの物事を『点』でとらえず、『うまくいく/うまくいかな
い』の2つで考えないようにしたほうが精神的にラクだ」
部下 :
「そうかもしれません」
マネジャー :
「本を読むのもそうだし、研修を受けるのもそうだ」
部下 :
「顧客フォローも一緒ですね」
マネジャー :
「その通り。当社では年に3回、大きなイベントをしている。毎回来場者は
平均、何人いる?」
部下 :
「平均来場者ですか。確か、当社のブースには100人は来場されると思い
ます」
マネジャー :
「その100人に方に来場してもらうために、平均何人ぐらいに声をかける
んだ」
部下 :
「そうですね……。5人声をかけると1人はいらっしゃる、と考えているの
で、500人には声をかけます。部下と手分けしてやっています」
マネジャー :
「ということは、イベントがあることによって、年間、何人に声をかけるこ
とになるんだ」
部下 :
「500人×4回ですから、2000人……。いや、重複している人も多い
ですから、おおよそ1000人ですか」
マネジャー :
「来場者は?」
部下 :
「来場者も重複していますが、それほど多くはないでしょう。年間4回で、
300人とか350人とか、です」
マネジャー :
「それらのお客様を継続的にフォローしたらどうなる?」
部下 :
「……それが、『線』で考える、ということですね。確かに、季節ごとに開
かれるイベントごとにフォローしていけば」
マネジャー :
「うん」
部下 :
「顧客育成につながります」
マネジャー :
「そうだ」
部下 :
「契約がとれるかどうか、ではなく、お客様を育成する、という観点で考え
たら、気持ちがラクになりますね」
マネジャー :
「同時に、部下育成にもつながる」
部下 :
「そうか……。リーダーの私が『点』で捉えていると、部下は育ちません
ね」
マネジャー :
「物事に対する評価は『線』で考えたまえ。しかし、行動するときはもっと
小さな尺度で考えるんだ」
部下 :
「もっと小さく?」
マネジャー :
「3月末のイベントに来場されたお客様100名に対し、フォローしてほし
い。いつまでに初回フォローを終わらせる?」
部下 :
「今の話を聞いていたら、すぐにやるべきと思えてきました。今週中にやり
ます」
マネジャー :
「今日が月曜日だから金曜日までの5日間、ということだな」
部下 :
「はい」
マネジャー :
「1人、何件フォローする?」
部下 :
「部下と5人で手分けしますので、ひとり20件です」
マネジャー :
「1日に平均何件、フォローすることになる?」
部下 :
「1日、アベレージで4件です。4件電話フォローするだけです」
マネジャー :
「……」
部下 :
「楽勝ですね」
マネジャー :
「楽勝だ。楽勝の行動を、ひたすら積み重ねることだけが重要だ」
部下 :
「開眼しました」
……物事を「点」でとらえ、「うまくいく/うまくいかない」と二元論で判断
していると疲れます。
「点」ではなく「線」でとらえ、「うまくいく可能性が高い/うまくいく可能
性が低い」で判断していると、精神的にラクになります。そしてその積み重ね
で、人生という「大きな線」の中では、「何でもかんでもうまくいく」という
ことになるのです。
物事に対する評価基準について、コラムを書きました。ご参考まで。
■ 自己評価が「完全加点方式」だと、ビジネスで何をやってもうまくいく
http://bylines.news.yahoo.co.jp/yokoyamanobuhiro/20150412-00044744/
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【34点】……本日のメルマガ本文に対する横山の「お気に入り度」
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【編集後記】
ご案内している通り、今年の8月で当社主催の「絶対達成セミナー」はなくな
ります。
ただ、1日の「絶対達成セミナー」がなくなっても、私のセミナーの数は年間
30回ほど減るだけです。
昨今、年に150回ほど登壇していますから、たとえ減らしても年100回
ペースは維持することになります。
2年前から名古屋で開催している「絶対達成ウーマン養成講座」は、反対に増
えていきます。
4月からいよいよ東京進出。
仕事に、育児に、やることがたくさんあって頭が整理できない。やりたいこと
があるけど、何を最初に手をつけたらいいかわからないという女性を対象に実
施します。
講座では、ワーキングメモリに入っているすべてのものをメモに書き出し、脳
のデトックスをします。そして作業の最小単位に分解したタスクを、『皮をむ
いたリンゴ』と見立てる自己管理手法【りんご管理】を、紹介するだけでなく
実際に全員でやります。
講座が終わったあとは、脳をデトックスしたおかげで、大きな気付きと、言い
得ない「すっきり感」に見舞われることでしょう。
(男性は参加できませんが、女性の部下(上司)を持つ方々はおススメしてい
ただけると嬉しいです)
※ 小さいお子さんを持つワーキングマザーもいらっしゃるので、平日午前の
開催と決めています。
ご興味のある方は、ぜひお越しください! (サテライト受講もできます)
■絶対達成ウーマン養成講座 東京4月27日(月)10:00~
→ http://wa-mama.com/schedule/yo0040-2-2/