2015年5月29日

サクランボと、ラポールと【認知リハーサル効果】

● 今回のテクニック:【認知リハーサル効果(2)】

認知リハーサル効果とは、記憶した内容を繰り返し想起させること(リハーサ
ル)で、その記憶を定着化させる効果を指す。

誰かの動きを変えたいと考えたとき、「言いっ放し」ではなく、何度も「思い
出してもらう」「書き出してもらう」「口に出してもらう」ことが重要である。


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● 今回のコミュニケーション例


マネジャー :
「ようやく出てきたか。ずっとトイレの前で待ってた」


部下 :
「……」


マネジャー :
「髪の毛が乱れきっている。ずっとトイレの中で頭を抱えていたのか」


部下 :
「……」


マネジャー :
「2時間だ。2時間も職場のトイレの中で隠れていたなんて、本当にどうか
してる。逃げとおせると思ったのか」


部下 :
「……」


マネジャー :
「係長も部長もさっきまで残っていたが、帰ってもらった」


部下 :
「課長」


マネジャー :
「たかが15万円」


部下 :
「……」


マネジャー :
「お客様から直接いただいた15万円を、そのまま自分の懐に入れた」


部下 :
「……申し訳、ありません」


マネジャー :
「君の旦那がいなくなって、もう2年。生活が苦しくなってきたのはわか
る」


部下 :
「……」


マネジャー :
「しかし、たかが15万円。それで人生、終わりにするつもりか」


部下 :
「……」


マネジャー :
「X社に電話連絡して発覚した。まだ商品の代金15万円が入金されていな
いと聞いたら、君に渡したというじゃないか」


部下 :
「……」


マネジャー :
「もう3ヶ月以上も前のことだ。着服するつもりはなかった、と言っても、
申し開きできない」


部下 :
「……」


マネジャー :
「娘さんはいくつになった?」


部下 :
「16歳、です」


マネジャー :
「春から高校1年だと言っていたな。下の息子さんは?」


部下 :
「3歳、です」


マネジャー :
「3歳、か……」


部下 :
「……」


マネジャー :
「『ラポール』だ」


部下 :
「……はい」


マネジャー :
「何度も何度も接触することで、相手と信頼関係――ラポールが構築されて
いく。これまでずっと言ってきたことだ。大切なことは『ラポール』だと」


部下 :
「……」


マネジャー :
「君は誰よりもお客様と接触してきた。わが社の営業80名の中で、一番お
客様のところへ足を運んでいた。私も、部長も、誰よりも君を信頼した。私
たちは、君にラポールを感じていた」


部下 :
「……」


マネジャー :
「しかし、今回のことで、私たちが抱いていたラポールはどうなったか」


部下 :
「……」


マネジャー :
「女子トイレにずっと隠れていて、そんなんで、恥ずかしいと思わないか」


部下 :
「……」


マネジャー :
「これから、君と子だちとのラポールは、どうなっていく?」


部下 :
「……」


マネジャー :
「旦那さんがいなくなり、強い絆で結ばれていたはずだ。それが、どうなる
んだ」


部下 :
「……」


マネジャー :
「こっぱみじん、か?」


部下 :
「……」


マネジャー :
「同僚からも、誰からも好かれていたはずだ」


部下 :
「……」


マネジャー :
「特に後輩の女性スタッフからは、頼りになる存在だった」


部下 :
「……」


マネジャー :
「これは……君のスマートフォンか」


部下 :
「……はい」


マネジャー :
「君のデスクに置きっぱなしだった。何度もメッセージの着信音がするので
見にいったら、LINEのメッセージが画面上に表示されている」


部下 :
「あ……」


マネジャー :
「メッセージが目に入ってしまった」


部下 :
「……」


マネジャー :
「『ふるーつ たべたい』とある」


部下 :
「ああ……」


マネジャー :
「3歳の息子さんが、高校生の娘さんのスマホを使って君にメッセージを送
ってきたのか」


部下 :
「いえ」


マネジャー :
「……」


部下 :
「娘がスマートフォンを持つ余裕は、ありません。隣の家に、……息子がた
まに、遊びにいくんです。そこの奥様のスマホから、私に送ったんだと思い
ます」


マネジャー :
「……『さくらんぼ たべたい』とも、ある。画面に表示されていたので目
に入ってしまった」


部下 :
「……」


マネジャー :
「息子さんはサクランボが好きなのか」


部下 :
「食べさせたことは、ありません」


マネジャー :
「娘さんが好きなのか」


部下 :
「娘も、給食で出てきたものしか……」


マネジャー :
「……」


部下 :
「……」


マネジャー :
「X社の担当部長から電話があったんだよ」


部下 :
「……え」


マネジャー :
「……」


部下 :
「……X社の、担当部長って」


マネジャー :
「T部長だ」


部下 :
「あああ……」


マネジャー :
「君を信頼していた、一番のお客さまだ」


部下 :
「……」


マネジャー :
「15万どころじゃない。200万も、500万も、1000万もの注文を
出してくれる、当社にとって、大事な、大事なお客様だ。その部長だ」


部下 :
「……ああ」


マネジャー :
「T部長に言われた」


部下 :
「……」


マネジャー :
「『御社との取引は終わりだ。金輪際、当社へ営業に来るな』と」


部下 :
「ああああああ、申し訳ございません……!」


マネジャー :
「バカ野郎っ!」


部下 :
「!」


マネジャー :
「私がT部長に電話で謝罪したから、T部長は激怒したんだ!」


部下 :
「……」


マネジャー :
「『君はあの子が15万円を着服したと思っているのか。あのお金は私が彼
女の娘さんの高校入学のためにあげたお金だ。当社が入金し忘れていただけ
であって、彼女を責めることはこの私が絶対に許さない』」


部下 :
「……!」


マネジャー :
「『もしも当社の担当営業から彼女をはずし、さらに勘違いして警察沙汰に
でもするようなことがあったら、お前の会社との取引は金輪際ヤメだ。二度
とうちへ営業に来るな!』と、T部長に言われた」


部下 :
「……そ、そんな」


マネジャー :
「……」


部下 :
「……そ、れは……」


マネジャー :
「……」


部下 :
「私が、私、は……。あの……。私が、確かに、あのお金を……」


マネジャー :
「君は、T部長から、もらったんだよ」


部下 :
「え……」


マネジャー :
「……」


部下 :
「……」


マネジャー :
「T部長が言うんだから、そうなんだ」


部下 :
「……だって」


マネジャー :
「君は、本当に、T部長と、ものすごいラポールを構築してきたんだ。そう
いうことだ」


部下 :
「……」


マネジャー :
「お客様のために、本当に、君は、親身になって、対応してきた」


部下 :
「……」


マネジャー :
「真実を捻じ曲げるほどの、力がある。それが人と人との信頼関係、という
ものなんだよ。それがラポールなんだ」


部下 :
「……」


マネジャー :
「理屈じゃない、本当に、そう思う」


部下 :
「……」


マネジャー :
「私は今、君に何を言っていいか、わからない。……とにかく、T部長に電
話してくれないか」


部下 :
「で、でも……。私のような泥棒が、電話なんか、して」


マネジャー :
「君じゃないと、X社との関係が終わってしまう」


部下 :
「課長」


マネジャー :
「ああ、それから――」


部下 :
「……」


マネジャー :
「うちの部長も係長も、T部長が君にプレゼントしたのだと思い込んでい
る」


部下 :
「え」


マネジャー :
「事務所の近くに、この時間までやっているスーパーがあるだろう。そこへ
係長を行かせた」


部下 :
「……」


マネジャー :
「もうすぐサクランボを買って帰ってくるから、それまでにT部長へ電話し
てくれないか」


部下 :
「……課長ォ」


マネジャー :
「もうすぐサクランボの季節だ。息子さんとのラポール構築のために、食べ
させてやってくれ」



……同じ言葉、同じフレーズ、同じ言い回しを、何度も何度も何度も何度も繰
り返すことができるか。

相手が苦笑いするぐらいに、

何度も何度も口にすることができるか?

「何度言っても同じだ」と勘違いしたり、自分の使う言葉に飽きてきたら、
リーダー失格だと私は思います。


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 【74点】……本日のメルマガ本文に対する横山の「お気に入り度」
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【編集後記】

「何をするにしても、気持ちがまったくわいてこなかった」

無料の「逆説の成功法則オンライン講座」の動画で私が語っていることです。
http://v6.advg.jp/adpv6/r/7py_12Gh

動画の中で私は笑って言ってますが、当時は他人に見せられるような状況では
ありませんでした。

アタックスに入る前、日立製作所の時代も、実はアタックスに入ってからも、
しばらくは、頭が真っ白で、

何をするにしても気持ちがわいてこないような、私はそんな人間でした。

「どうしてそんな風だったの?」

と、「理由」を聞きたがる人がいます。

しかし、「理由」を聞きたがる、ということは、そういう経験をしたことがな
い人だな、といつも思います。

人間って、理由もなく、頭が真っ白な状態になるし、空虚な気持ちに襲われる
ことはあるし、意欲がまったくわいてこないような状態になることもある、と
私は思っています。

「理由」を問う、ということは、ある意味、その人を責める行為です。

理由など聞かず、相手とペーシングし、信頼関係(ラポール)を構築していけ
ば、その状態から抜け出させることもできるでしょう。

空虚な私を、実態のあるものへと変化させてくれたのは、やはりNLPの山崎
啓支先生であり、その当時のコースに参加していた受講生の仲間たちであると、
断言できます。

それらメンターと仲間たちと、私とのラポールは、とても強靭に繋がっており、
今でもサクランボのように「つがい」になっていると感じています。