2015年5月4日

「芸術志向」のコミュニケーション技術【スリリングジョーク】

● 今回のテクニック:【スリリングジョーク(11)】

スリリングジョークとは、相手に対して、「もし●●しなければ、■■になる
ぞ」という脅しをしたあとに、すぐに「それは冗談だ」と撤回するコミュニケ
ーション技術。

相手の心象を悪くする可能性が高く、極めてリスキー。相手と強烈なラポール
が構築できていない限り、活用するのはやめたほうがよい。3年に1度ぐらい
使ってもいい、インパクトのあるリーディング技術である。

もちろん、乱用すればご自身の信用は著しく低下する。


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● 今回のコミュニケーション例


マネジャー :
「ゴールデンウィーク中、何か用事があるのか」


部下 :
「いえ、別にこれといって用事はないです。子どもがまだ小さいので、基本
的に家にいる予定です」


マネジャー :
「それならゴールデンウィーク中、事務所に出てくれないか。手伝ってもら
いたい仕事がある」


部下 :
「失礼ですが、それって課長が先送りし続けてきた仕事のことではありませ
んか。私も何度か指摘させていただきました。早めに片付けないと、ゴール
デンウィークがなくなりますよって」


マネジャー :
「その通りだ。しかし、こうなってしまった以上、仕方がない。やることが
ないのなら、手伝ってくれ」


部下 :
「そんな」


マネジャー :
「じゃあ、決まりだな」


部下 :
「ちょ、ちょっと待ってください。いつもこのメルマガ、大型連休のときは
お遊びの内容になるのをご存知ですか?」


マネジャー :
「え」


部下 :
「今はゴールデンウィーク中です。このメルマガを読む人も半分以下でしょ
う。せっかくですから、もう少し『遊び』のある会話をしませんか」


マネジャー :
「いいけど、どんな『遊び』が考えられるんだ」


部下 :
「たとえば、芸術志向の映画や、抒情詩的な小説に出てくるようなセリフを
やり取りするというのは、どうでしょうか」


マネジャー :
「……? どうやれば、芸術志向の会話になるんだ?」


部下 :
「会話の前提条件、背景を完全に省略したり、相手の話の2手、3手先の受
け答えをしたり、大仰に、人間の心理探求に関する発言をすれば、それらし
い会話になると思います」


マネジャー :
「わかった。やってみよう」


部下 :
「それでは、いきますよ……。課長、確かに私はゴールデンウィーク中、こ
れといってやることはない、と言いましたが、これといってやることはない、
ということはつまり、それと同等の不安も抱えている、という意味なので
す」


マネジャー :
「大学時代に読んだ、カミュを思い出す」


部下 :
「あなたは言葉で語るのね。私は感情で見つめているのに――」


マネジャー :
「それは『気狂いピエロ』。ジャン・ポール・ベルモンドになったつもり
か」


部下 :
「これといってやることはない、という言葉が喉を通るとき、私はベルモン
ドに変身します」


マネジャー :
「君の真理か」


部下 :
「虚ろな日が、虚ろな人生の一部であるとは限らない、と私は言いたいので
す」


マネジャー :
「君もベルモンドと同様に、青いペンキで顔を塗りたくれ」


部下 :
「……私に残された時間はわずか、そういうことなのです」


マネジャー :
「不条理だな」


部下 :
「不条理なのはゴダールです」


マネジャー :
「どうしても、ゴールデンウィーク中、私の仕事を手伝うことはできない
か」


部下 :
「私は異邦人ではありません。ベルモンドなのです」


マネジャー :
「おお! なんて君はバカ野郎なのだ。私は君をあえてこう呼ぼう、おお、
バカ野郎と……」


部下 :
「……」


マネジャー :
「君が、うつろな日々の後に、ダイナマイトを抱えて死ぬことになるだなん
て」


部下 :
「……」


マネジャー :
「……」


部下 :
「……」


マネジャー :
「……」


部下 :
「……そろそろ、やめましょうか」


マネジャー :
「やめよう。私も何だかわからなくなってきた」


部下 :
「いずれにしても、私はゴールデンウィーク中、お手伝いはしません。もし
どうしてもというのなら、課長の顔に青いペンキを塗りたくり、ダイナマイ
トを巻きつけますよ」


マネジャー :
「おいおい……。ちょっと待ってくれ」


部下 :
「冗談ですよ」


マネジャー :
「……君の場合、ジョークに聞こえないな」


……2008年4月4日にスタートしたこのメルマガも、書き続けて、もう7
年が経ち、今年度から8年目に突入しました。

スタートした当初、「続けることがすべて」と、自分に言い聞かせ、自分のス
タイルをあまり変えずに7年が経過。

たまに、読者目線を無視した「遊び」を入れるのも恒例となりました。

今後も、自分が楽しいと思えるメルマガを書き続けていきたいと思います。


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 【9点】……本日のメルマガ本文に対する横山の「お気に入り度」
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【編集後記】

「情報の省略」をどれぐらい楽しめるか、それを悦楽として受け止められるか。

……が、芸術的なものとの相性を図るうえで重要です。

何らかの芸術作品に接したとき、「難解」「意味不明」「わけわからん」で片
づけるのではなく、

削ぎ落とされた表現の個所を、自分自身の過去の体験や、自分の脳に存在する
データで補おうとする、その行為そのものを楽しむ余裕があるといいですね。

その行為を面倒だと思う人は、大衆的な娯楽へと傾倒していくのでしょう。

しかし、そうすると「頭を使う」という機会が減り、人生を送るうえで訪れる、
数々の「謎」「疑問」を解き明かすスキルもまた、落ちてくるのだろうなと思
ったりします。

誰かに解釈を求めるのではなく。