2015年8月20日

「センスのある日本語表現」を作るための名著【ホールパート法】

● 今回のテクニック:【ホールパート法(12)】

ホールパート法とは、最初に話の全体像、ポイントを(WHOLE)を相手に
伝え、それから話の枝葉、部分(PART)を説明する話し方。

相手の「頭」を整理させるうえで、とても簡単で効果的な技術。

「ポイントは2つある」
「ここで私が言いたいのは1点だけだ」

このように伝えてから、それぞれのタイトルを話す。

「効率化と、情報共有」
「お客様の声だ」

その後、タイトルに沿った話を展開させていく。報道番組でキャスター、コメ
ンテーターなどがよく活用しているので注意深く聞いてほしい。

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● 今回のコミュニケーション例


部下 :
「課長、できました」


マネジャー :
「どれだ」


部下 :
「こういったキャッチコピーでいかがでしょうか」


マネジャー :
「『青く澄んだ空に、綿菓子のような白い雲が浮かぶ、そんな空を見にきま
せんか――』」


部下 :
「どうですか」


マネジャー :
「はあああ……」


部下 :
「イマイチですか」


マネジャー :
「前のほうが、まだ良かったじゃないか」


部下 :
「『9月になっても、青い空、白い雲、赤い夕焼けを見に来ませんか』――
のほうですか?」


マネジャー :
「ううううん……」


部下 :
「夏のシーズンが終わってからも当旅館へ来てもらうためには、もっと秋ら
しいキャッチコピーのほうがいいでしょうね」


マネジャー :
「そうじゃなくて……。もっと粋なレトリックを考えてくれよ」


部下 :
「レトリック……。比喩ですか」


マネジャー :
「君が作った表現は、どこかで聞いたことのある『修飾節』や、ありきたり
の『直喩』でごまかしている。心に響かないんだよ」


部下 :
「直喩? 直喩って何ですか?」


マネジャー :
「『まるで……のような』という表現が直喩だ。いっぽう隠喩は、比喩であ
ることを明示していない修辞法のこと」


部下 :
「修辞法……。どこかで勉強した記憶があります」


マネジャー :
「たとえば昨年のキャッチコピーを見てみる。『秋の空は母の顔。ずっと観
ていると照れ臭いけれど、柔らかい風が胸の中を満たしていく』」


部下 :
「おおおお」


マネジャー :
「どうだろう。受付の女性が考えたキャッチコピーだ」


部下 :
「いいんじゃないでしょうか。素敵です」


マネジャー :
「60点……ぐらいかな。『柔らかい風が胸の中を満たしていく』という表
現が、自分に酔っている感じだ」


部下 :
「そうですか? 厳しいですね」


マネジャー :
「自己陶酔でコピーを書くと、読み手を置き去りにする」


部下 :
「いやあ……。私はダメですね。とてもそんな表現はできません。センスが
ないですから」


マネジャー :
「フェイスブックで投稿しているだろう?」


部下 :
「はい。美味しいものを食べたりすると、写真をとってアップしますね。ツ
イッターにも」


マネジャー :
「君の記事を読んだけど、もう少し工夫があったほうがいいな」


部下 :
「やっぱりそうですか」


マネジャー :
「『美味しいチャーシューメンを食べた。特にチャーシューは肉厚で、食べ
ごたえがある』」


部下 :
「そうそう。いつもそんな感じです」


マネジャー :
「文章力をつけるために始めたんだろう? もっと考えて投稿しろよ」


部下 :
「そうは言っても、センスがないんです」


マネジャー :
「『センスがない』で片づけるな。センスや才能のせいにするのは甘えてる
証拠だよ」


部下 :
「す、すみません」


マネジャー :
「天才的なセンスは手に入れられないかもしれないが、知識に裏付けられた
センスなら手に入れられる」


部下 :
「知識に裏付けられたセンス! メチャクチャ興味があります」


マネジャー :
「レトリックには3つある。意味のレトリックと、形のレトリックと、構成
のレトリックの3つだ」


部下 :
「意味と、形と、構成……と」


マネジャー :
「そう。意味のレトリックというのは、直喩や隠喩のように意味の転換、調
節、迂回をしながら言い回しを変えることだ」


部下 :
「へえ……」


マネジャー :
「形のレトリックとは、文章の形に関するレトリックで、文章の順番を入れ
替えたり、省略したり、反復したりして言い回しを工夫する」


部下 :
「はい……」


マネジャー :
「構成のレトリックというのは、構成そのもので言い回しを工夫する。たと
え話や、引用など、他にもたくさんある」


部下 :
「凄いですね。レトリックでも、そんなにあるんですか」


マネジャー :
「もう一度繰り返す。レトリックには3つある。意味のレトリックと、形の
レトリックと、構成のレトリックの3つだ」


部下 :
「私も勉強したくなりました。知識を得ることで、もっと日本語のセンスが
よくなる気がします」


マネジャー :
「名著があるから紹介しよう」



……紋切型の文章ではなく、自分の個性を出したい。センスのある日本語表現
を体得したい、という人に、絶対にお勧めしたい名著がコチラ。

「日本語のレトリック」です。

修辞技法や単なる比喩表現の解説のみならず、どのようなテクニックで「巧み
な言いまわし」を創り出すことができるのか?

特にブログやフェイスブックやメルマガを書く人は、三省堂の「てにをは辞
典」とともに、手元に置いておきたい一冊です。


■「日本語のレトリック―文章表現の技法」
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4005004180/mysterycon0c-22/ref=nosim

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 【39点】……本日のメルマガ本文に対する横山の「お気に入り度」
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【編集後記】

前述した「てにをは辞典」は、本当に素晴らしい一冊で、文章を書く人なら、
必ず持っておいたほうがいいと思います。

どういう言葉の後ろに、どのような助詞がくっつかなければならないのか?
この基本的なことを知らないと、「報告書」「提案書」も正しく作ることがで
きません。

私自身も文章で反省することがとても多く、いろいろな方に指摘を受けながら
勉強しています。

あるとき、私のメルマガを読んでくれている方から、

「僭越ながら、横山さんの文章は『の』と『が』の使い方をもっと工夫したほ
うがよいと思います。よく……という文章を書いておられますが、……のほう
がスッキリとした文章になりますよ」

というご指摘を受けました。

非常に、ありがたいご指摘でした。

こういうときも、「てにをは辞典」がとても参考になります。

ひとつの指摘から、他にも文章表現でおかしいところはないだろうか、と探す
手掛かりが見つかるからです。

ブログやフェイスブック等で、いろいろな方の文章を目にします。ビジネス書
でもそうです。

しかし、随筆家や小説家は当然のことながら、コラムニストやエッセイストな
どの書く文章は違います。

「言葉の綾(あや)」が違う。リズムを崩さず、独特のフレーズを選択して、
読み手の心をひっかけ、「小さな傷」を残す。

万人受けの文章を書きたいとは思いませんが、最低限の文章のルール、技法は
知識として持っておかないといけませんね。