2015年8月31日

相手を圧倒するほど「熱く語る」コツ【好意の返報性】

● 今回のテクニック:【好意の返報性(15)】

好意の返報性とは、人は好意を受けられると、それを返したくなるという習性
のことで、ミラーリング効果ともいう。

相手とコミュニケーションをする際も、好意をもって接するのと、そうでない
のとでは相手の反応も異なる。特に信頼関係(ラポール)が崩れてきたときに
は、「きっと……に違いない」と思い込み、決め付けたような悪意ある物言い
をしてしまうものである。

ニューロロジカルレベルの概念を意識し、どんな相手であろうと、その「アイ
デンティティ」や「価値観」には好意を持ち(承認し)、相手のとった「行
動」にこそフィードバックしたいものだ。

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● 今回のコミュニケーション例


部下 :
「ちょっと課長さん、この資料、これでいいでしょうか。すごく気になっち
ゃうんで聞きに来てしまいました。すみませんね。もしよろしかったら、懇
切丁寧に教えてもらえると嬉しいんだけど」


マネジャー :
「ああ、君が有名な新人君だね。ええと――」


部下 :
「あらら、いやァねェ! どうして私が有名な新人君なんですか。ちょっと
びっくり。信じられない。驚いちゃった、本当に。あらあら、なになに?
課長さん、何か知ってるんですか私のこと」


マネジャー :
「いやいや……。って、あの、その……」


部下 :
「あらあら課長さん、そんな風にうろたえなくたっていいじゃないですか。
まるでエイリアンの子どもを初めて見るような表情をしていますよ。私は昔
働いてたお店の都合でこういう話し方になっちゃうんだけど大丈夫。お客様
の前では意外ときっちりしてるんで。そこは心配にならないでくださいね」


マネジャー :
「あ、ああ。そうなの?」


部下 :
「はい。大丈夫です。もう34歳になってこんな話し方だけど、頭は正常な
ので。それに奥さんもいるし、子どもも2人いるんですよ。上が9歳で下が
2歳。2歳の息子がまたチョー可愛いの。あらあら、わかります課長?」


マネジャー :
「え? ああ、2歳の息子さんがいるんだ」


部下 :
「そうそう私がおっぱいあげてるんです。いやァねェ」


マネジャー :
「えっ!」


部下 :
「じょーーだんですよォ! あらあら。なんて顔してんですか課長。冗談で
すってごめんなさい。私はいつもこんな調子なんでよろしくお願いしますね。
言っときますけど、どんなに殴られても、息の根を止めない限りは、この話
し方変えないので慣れてちょうだい。仕事は絶対にキチンとやりますから」


マネジャー :
「あ、ああ。仕事さえキチンとやってくれれば大丈夫。9月から私の部下に
なるんだったよね」


部下 :
「そうなんです。それでこの資料を提出してくれって言われて。えーっとな
んだっけ人事部? 人事部のお父さんみたいな人が書いて課長に提出してく
れ、すぐにだ、すぐに、って言うもんだから、その2分後にはデスクに戻っ
てメールをキャッチして、ダウンロードして、書いて、印刷して、課長さん
とこに持ってきたってわけです」


マネジャー :
「な、なるほど。資料を見ておくよ。詳しいことは、あとで話す」


部下 :
「よろしくお願いするわ」


マネジャー :
「ところで、ひとつ聞いていいかな」


部下 :
「あらあら。何でしょう? 何でも聞いてください。9月から私の上司にな
る方なんですから。遠慮することなんてないんですよ」


マネジャー :
「どうしてこの会社に入ったんだ……っていうか、どうして前の会社……お
店? を……辞めて、まで」


部下 :
「あらあら、いやァねェ、前の夜のお店を辞めてどうしてこの会社に入った
か、どうしてその世界から足を洗ったのかという話ですか? あら、そんな
の簡単です。昔からサラリーマンに憧れてたからですよ」


マネジャー :
「サラリーマンに憧れて……?」


部下 :
「そうですよ。いやァねェ、サラリーマンって超すごいじゃないですか。会
社員ってヒビキが凄くいい! もう感動しちゃう。この『私は会社勤めして
ます』みたいな言い方って最高! 誰よりも尊敬するわよ、家族のために毎
日会社に通勤して朝から晩まで働く。素晴らしい! こういう理想の仕事に
就ける喜びってそうないわ。あらあら、そうでしょう?」


マネジャー :
「そ、そうかな……」


部下 :
「課長さんは大学卒業してからすぐ、この会社にご入社されたの?」


マネジャー :
「いや、28歳のときに転職した。前は別の会社にいてね」


部下 :
「前も会社員で、その後も会社員? あらあら、超ぜいたく! 信じられな
い。私の昔のお店でソレ聞いたら、それだけで興奮しちゃう。絶対にやばい
よ。その経歴」


マネジャー :
「その経歴? やばい?」


部下 :
「最高ってことよ。超やばい。すごくカッコいい。だから憧れてたの。憧れ
って誰にでもあるでしょう? 私の場合はフレディ・マーキュリー。彼が4
5歳の若さで逝っちゃったとき、どんなに悲しんだことか……。彼と同じぐ
らいに私にとってサラリーマンはやばい存在よ。いやァねェ」


マネジャー :
「へえ」


部下 :
「それにこの会社、紙業でしょう? 紙を扱ってる会社じゃないの。私、紙
って聞くと『神』を思い出すのよね」


マネジャー :
「こじつけだろう」


部下 :
「あらら、違うの違うの。いや、ちょっとこじつけかもしれないけど、でも
紙は神のようなものなのよ。だからいつか紙を扱う会社か、髪の毛を扱う会
社に入りたいと思ったのよ、そういうわけ。私は神を信じているから」


マネジャー :
「信仰があるのか?」


部下 :
「ぜんぜんないっ! でもいいのよ、神は神なのよ。だから私はこの会社の
社長さんと知り合ったときから紙のことを勉強したわ。紙を扱う会社に悪い
会社はない。そう信じてこの業界のことも技術のことも勉強したのよ」


マネジャー :
「聞いたよ。紙業について、けっこう詳しく勉強したらしいじゃないか」


部下 :
「そりゃあ当たり前よ! 何もわからなくて、勉強もせずに、サラリーマン
なんてできるわけないじゃないの。私がフレディ・マーキュリーになれるん
だったら、何でもやるわよ。そうでなければ息の根を止めるまでよ!」


マネジャー :
「……」


部下 :
「あらあら、だからねェ、課長さん。私がこの会社に入ったからには、とに
かく死ぬ気で働くわ。どんな仕事でもやる。私たちの世界で死ぬ気って聞い
たら、何となくわかるでしょう?」


マネジャー :
「あ……、いや、わからないが、とにかく、でも、長時間労働はダメだよ」


部下 :
「長時間は働かないけど、結果を出せばいいんでしょう? とにかく9月1
日からロケットスタートできるように、心の準備だけはしておくわ。ああ、
あとそれと、1日からすぐ営業活動できるようにリストをちょうだい。お客
様のリストよ」


マネジャー :
「ええっと……」


部下 :
「人事の人に休眠顧客をまわってほしいって言われたから、そのリストをち
ょうだいよ。はやく」


マネジャー :
「わかった。精査しておくよ。800件もあるから」


部下 :
「800件、まるごとちょうだい。2週間ですべてまわってみせるわ。私に
不可能はないわ」


マネジャー :
「ええっ!」


部下 :
「ちょっと課長さん、そんな大きな声出さないでちょうだい。あらあら当た
り前じゃないの。実際に下調べはしてあるのよ。さっき紙業の業界について
は調べたって言ったじゃないの。お客様も検討がついてるのよ。先週末に実
際に足を動かしてシミュレーションして、その作業は終わってるわ」


マネジャー :
「シミュレーション?」


部下 :
「1日に110件はまわれたわよ。だから頑張れば2週間で800件はまわ
れる。だから1ヶ月で2回転はできる。私のこの喋りで月間1600件まわ
り続け、1年もやったら、きっと仕事はとれるわよ。そうじゃない?」


マネジャー :
「そ、そうかもしれない」


部下 :
「私、サラリーマンに憧れてたの」


マネジャー :
「あ、ああ……」


部下 :
「こんな素晴らしい仕事、他に本当にない。絶対に断言できる。日本の首相
になるより、紅白歌合戦の司会者やるより、160キロ以上の剛速球を投げ
るプロ野球選手よりも、絶対に素晴らしい。『ボヘミアン・ラプソディ』を
歌うことより貴重な話なの、わかる課長さん?」


マネジャー :
「そ、そうか」


部下 :
「大好きよ! サラリーマン」


マネジャー :
「すごいな」


部下 :
「断っておくけど、私を好きにならないでね」


マネジャー :
「こんなに全力で、会社が好きとか、仕事が好きとか言う人をはじめて見た。
君のことを好きにはならないけど、気になる存在にはなるだろう」



……相手を説得する、一目を置かれる存在になるためには、「熱く語る」とい
う行為は効き目抜群です。

それでは、熱く語るためにはどうすればいいか? 私が動画でクールに解説し
ています。


■「熱く」語る3つのポイント
https://www.youtube.com/watch?v=DlPixhU8k1U


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 【69点】……本日のメルマガ本文に対する横山の「お気に入り度」
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【編集後記】

幼いころ、家が貧乏で、夏休みの間は親にどこにも連れて行ってもらえません
でした。

暇なときは、近所の大きな家の壁にボールをぶつけ、2時間でも3時間でもひ
とりで遊んでいた記憶があります。

家に戻ると父親がずっと酒を飲んでいるので、家の中が酒臭く、とにかくその
匂いがイヤで、家には帰りたくはありませんでした。

夜は夜で、父親がテレビを独り占めにしているので、ひとりで漫画を読むぐら
いしかやることがありません。

その時に読んでいたのが「マカロニほうれん荘」という漫画です。親戚に買っ
てもらった1巻と3巻だけを持っていて、その2冊がボロボロになるまで読ん
でいました。

「よう飽きずに、おんなじ漫画ばっか読めるなぁ」

と酔った父にからまれても、「マカロニほうれん荘」に向ける目をそらしたり
はしませんでした。

当然、それだけ食い入るように読んだ漫画ですから、ほとんどすべての展開や
セリフも覚えていました。

今回の本文の「部下」の喋り方は、少しだけ「マカロニほうれん荘」の重要キ
ャラ「きんどーさん」に似せてみました。

「マカロニほうれん荘」をよく知っている人は「ちょっと違うな」という感想
を持つことでしょう。きんどうーさんは敬語を使いませんし。ですが、あのノ
リは好きなので、思い出しながら書きました。